ヤツの名前はペインキラー

 僕が高校生の頃、MTVで何度も流れていたモノクロのビデオがあった。激しいドラムの連打にキレ味のいいギターリフが分厚く重なり、ハイトーンの男の叫び声がこだまする。ジューダスプリーストの名曲「ペインキラー」。何度も流れていたのは、僕が家で何度も録画したビデオを観たからだ。

 この曲と、アルバムジャケットのイメージからペインキラーというのは厳つい名前だなぁと思っていた。長じて知ったのは、ペインキラーとはその名の通り「痛み止め」のことだということ。ただ、あのビデオのカッコよさと激しさには痛みを忘れさせる、麻痺させる効果はあったような気がする。

 いま僕は、仕事先に向かうバスの中で、ある痛みに耐えている。まさにペインキラーを欲する状態だ。足の甲に鋭い痛み。すでにこの感覚には慣れた。当初は「骨、折れてるよね?」と思うほどの痛みだったが、原因を知ったら冷静になれる。でも、痛いのは変わらない。だから湿布を貼っている。

 僕が高尿酸血症と診断されて5年以上経っただろうか。いわゆる「痛風」だ。僕のかかりつけの医者は、この件については「生涯の友と思って諦めろ」との見解だが、僕の周りには諦めていない同胞も多い。僕と彼らの違いは、薬を飲んでいるかいないかだ。僕は飲んでいる。それなのに痛いのだ。

 生活習慣的には何ら対策していないので、薬の効き目にも限度があるのだろう。こんな憂鬱な日には(酒を)飲みたいものだが、それが原因で痛いのに飲みに行くのはイカれてる。まだ仕事前なのに酒を欲するなんて、これは依存の初期なのか末期なのか分からない。とは言え、今夜は飲まないが。

 こんな時はジューダスプリーストを聴くしかないだろう。効き目のある痛み止めだ。そんなことを述べながら、すでにバスを降りて電車の中の人になった僕がさっきから感じているのは「痛み、引いたな」ということ。それは、つまり今夜飲めるということか? ま、仕事が終わってから考えよう。

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盛り場がオレを呼んでいる、なんてことはなく、勝手に焦がれているだけだ。