鋭敏嗅覚秋季人間鼻

 外に出ると、隣近所の庭から秋めいた香りが漂ってくる。このトイレの芳香剤みたいな匂いは、自然のものの方が濃い。化学合成された商品の匂いの方がソフトに感じる。かつての芳香剤は「匂い隠し」のためにかなり強かったと記憶している。でも、最近の芳香剤は控えめだ。そんな風に感じる。

 以前、食品メーカーに勤めていた頃、その会社の研究職の後輩にフレーバー(香料)について教えてもらった。アロエ入りヨーグルトを例に出され、あの匂いにはライチフレーバーを使っているんだと聞かされた。アロエ自体は無味無臭らしく、あの食感に合う香料としてライチが選ばれたようだ。

 もともとライチを食べ慣れていない僕にとっては、アロエヨーグルトで味わったフレーバーが先に来ている。些細なことだが、僕の中では常識が完全にひっくり返るパラダイムシフトが起こった。それ以降、その後輩のことは密かに頼りにしていたが、会社を辞めて以来、20年以上会っていない。

 僕は特に匂いに敏感な方ではないが、自分の体臭が気になるので学生時代から注意はしている。生乾きのTシャツを着て出かけてしまった時などは、同行している人間に指摘される前に自分から言う。言ったところで匂いは消えはしないのだが、言われた方は諦めがつくだろう。そのうち慣れるし。

 あと、他人の体臭をソムリエのように表現するのも好きだ。傾向としては「柑橘系」と「動物系」と「エンピツの芯系」がある。ラグビー部だった僕は、いろんな匂いの人間とぶつかり合ってきた。夏の練習試合では、ジャージにこびりついた代々の部員たちの呪いのような匂いに襲われたものだ。

 僕のポジションは「ロック」と言って、スクラム第2列と呼ばれる力仕事だ。最前列の人間の尻に肩を当てて押し込むので、当然肩が臭くなる。試合中も、常に僕の肩には匂いが居座っている。その時に思ったのは「オレのケツも臭いのかな」ということ。やはり匂いには注意しなければいけない。

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散歩中ずっとクサいと思ったら犬フンを踏んでたなんてこと、誰にでもある。