ワーキングクラスの海を漂う

 最初に就職した会社では営業マンだった。いや、正確には営業マン見習いの気分のままで辞めてしまったが、ついた仕事は営業職だった。その会社で扱っていた商品の知識を深めるため、メーカーが講習会を開いてくれたりする。それは半分接待みたいなものもあれば、割と本気の講習の時もある。

 それらの講習のうち、営業の新入社員は強制的に参加させられる2泊3日の勉強会があった。関東全域の問屋が集まるのだが、年齢も意欲もバラバラで居心地の悪い場だった。専門知識を得るために参加している僕と違い、周りは商品知識をある程度知った上で、さらに深めるために来ているのだ。

 僕は、疎外感を感じた瞬間に顔に出る。不愉快顔になってしまう。大柄で不愉快ヅラした小僧なんて誰も相手にしない。外側に愉快な印象を放出した方が楽しいはずだ。でも、心をコントロールできない。結局、その勉強会に参加している期間中は、その場にいる誰とも打ち解けることはなかった。

 勉強会2日目の夜に懇親会が開かれた。その場には知った顔のメーカーの人間も来ているので、その人らと話していれば間はもつ。ただ、他社の営業が使う聞きなれないカタカナ言葉が理解できない。今でも覚えているのは「プロパー」という言葉。僕が話した相手はプロパーではなかったようだ。

 その時の会話の流れから判断すると、その人は「中途採用」ということだったので、プロパーとは「生え抜き社員」のことだろう。初めて聞く言葉なんだから、その場で聞けば良かったのだ。その辺が可愛げのなさだ。あとで「あいつ、あんなことも分からないのか」と陰口を叩かれたくないのだ。

 でも、素直に聞いた方が相手に取っても気づきになる。当たり前のように使っていた言葉が取引先に通じていない可能性もあるのだ。先の「プロパー」に関しては、結局自分の会社の先輩に聞いた。そういうことに即座に答えてくれる優しい先輩を選んで聞いた。今ならネットで簡単に済む話だが。

f:id:SUZICOM:20201002114844j:plain

よく行く居酒屋のサラダ。手前の派手な野菜の名前は聞いたけど覚えてない。