ていねい言葉で追いつめて

 僕はあまり他人を褒めない。特に、優れた部分がある人間を褒めない。それは、褒めることで相手より上に立っていると主張しているように感じるからである。その人の優れた部分というのは、当然のことながら僕よりも優れているわけだ。それを褒める立場にいないから、褒められないのである。

 でも、年齢を重ねてくると人間は褒められたいものらしい。若い頃であれば、どれだけ自分が優れていても「人は人、自分は自分」だと割り切る潔さがあったハズなのに、久しぶりに会うと「褒め」を欲しがっているように見える。可愛いものだ。褒めてあげてもいいが、先の理由で褒められない。

 仮に、相手より劣っている僕が相手を褒めたとすると、それはひどくミジメで情けない姿になる。子分が親分をおだてる時の感じだ。ある部分に関しての優劣だけで、そこまで自分を下げたくはない。だから僕は、同世代が軽い自慢を出してきた時は、褒めずに流すを徹底するように心がけている。

 ただ、それを全然認めないのも大人気ないので、流す際には「分かったから、分かっているから」と理解は示しておく。その代わり、その話には乗らないという部分で線を引く。線は上手く引ける場合もあるが、負けず嫌いが相手だと根負けするまで言いくるめようとするので、面倒な時は折れる。

 自分に置き換えて考えると、僕は褒められて嬉しいだろうか? まったく嬉しくないわけではないが、どちらかというと恥ずかしい。仕事に関しては、代金に応じて働いているだけなので褒められることはない。大人が褒められるのは普段の生活や、趣味のことなどだろうか。僕の場合は前者だが。

 恥ずかしさついでに言うと、僕が褒められる言葉は「優しい」だ。場合によっては「甘い」や「弱い」と同義なので褒めてないと思う。でも、相手の様子を見ると、それを「良い面」として言ってくれているようだ。自分の内面をよく知る僕は、そんな時はひたすら恥ずかしいので、消えたくなる。

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酒場での会話で、この人を褒めるのは「新しい」と思うとすぐ褒める。