熱い世界で夏いちばん

 汗かきな僕は、学生時代、帰り道にあるすべてのコンビニに立ち寄っていた。多少の汗は仕方ないのだが、最高潮の発汗がはじまると僕の体表すべてが水浸しになる。うすく汗コーティングされてビチャビチャになる。そうなると抑えられないので、コンビニで冷やしながら帰るという夏の思い出。

 かつてのコンビニはガン冷やしで、心臓が止まりそうなほど涼しかった。そこから灼熱の外に出た時のファーストタッチ、ムワッとくる熱気の気持ち悪さたるや。あの落差は逆サウナというか、何度か繰り返していると「絶対に体に悪いぞ」と脳が警告を鳴らしていた。それでも冷やし続けていた。

 そんな暑がり野郎の割に、家では滅多にクーラーを使わなかった。小さな家で、クーラーを使うと停電するという物悲しい事情もあった。でも、そうやって育つとクーラー使用に罪悪感があるので、最近のように「酷暑日はエアコンの効いた部屋で過ごしてください」と言われても多少は我慢する。

 長年の経験で身についていることは、梅雨明け後しばらくは暑いということ。先週まで涼しかったのが、いきなり暴力的に暑くなる。このタイミングではエアコンを使った方が良い。いや、むしろエアコンなしで室内にいると参ってしまう。現在の社会では、体調を崩したら自由に動きにくくなる。

 いつでも自由に動くために、不本意ながらエアコンを使うようになったのがここ数年だ。熱中症という言葉も、学生時代に聞いた記憶はない。集会で倒れる生徒がいても、教員はまず当該生徒を怒ってから、保健室に連れて行くよう他の生徒に指示していた。あの応対でよく事故がなかったと思う。

 でも、今では熱中症の危険を察知すると、すぐに水分を取る。暑い部屋で作業をするのが気持ち良いのだが、ふと落ちていることがある。コレは危険な兆候だと思い、隣の冷やせる部屋に移動する。そこで体を冷やしていると、昼下がりの誘惑に負けて普通に眠りこけてしまう。仕事は、捗らない。