その感情には名前がある

 僕が子供の頃からずっと読んだり、見てきたものからの影響として身につけた感覚というか、どん底から見上げた上空にいる仮想敵に対して燃やす怒りを常に持っているような気がする。だから、いわゆる「上から目線」で話してくる人に遭遇すると身構えてしまう。こいつは「敵だ」と思うのだ。

 長じて、この感覚には名前があると知った。それは「ルサンチマン」と言うそうだ。意味は「弱者が強者に対して憤り・怨恨・憎悪・非難の感情を抱くこと」らしい。この感覚がベースにあると、いつまで経っても自分の立場が好転しない。会社に例えるなら出世しない。弱者は偉くなれないのだ。

 自分が弱者だと思ったことはないので、その立場を周りにアピールすることもない。ただ、姿勢として「見上げて怒る」のが好きなのだ。手に負えない相手に「絶対に負けないぞ」と虚勢を張り続けるようなガッツを持っていたいのだ。ただ、あまり理論的でない僕は、これを理論武装していない。

 僕の場合、そうは思っていても、理論的に強いヤツにペロッと負けちゃっても何も気にしない。理論で負けても自分の芯は何も納得していないし、負ける前となんら変わっていないのだから。単なる感情の置き方の問題なので、言わなければ誰からも指摘できない。言って指摘されても変えないし。

 この感覚は中学生の頃には備わっていたと思うが、具体的な例として示されたのは高校に入ってからだった。その頃に読んだ漫画「迷走王・ボーダー」に提示されていたのは、バブル経済の恩恵を受けている「持てる者たち」の側と、恩恵の外にいる者たちとの対立だ。この対比が分かり易かった。

 主役はボロアパートに暮らす3人組で、バブルから見放されてもギリギリドロップアウトしないで朗らかに生きている姿から「ボーダー(境界線上を行く者)」と呼ばれた(作中一度だけ)。そう、ドロップアウトすると見上げる視線を持てないのだ。いつでもギリギリ地上にいなくてはいけない。

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弱者に優しい立ち食いうどん。ちょっと贅沢にかき揚げを乗せてみた。