酒飲むと走る男

 僕は、どんな時でも走れることが理想の状態だ。思い立ったら走り出せることは、人間にとって最大の武器になると思っている。だから、いつも走れる体でいたい。と思いつつ、かなり長いこと走れていない。ゆっくりとジョギングを始めて、割と走れるようになってきたなぁと思うと肉離れする。

 今も、数週間前に傷めた肉離れが治らず、走ることからは距離を置いている。それでも、街中で走らなければいけない瞬間は、不意にやってくる。僕が街中で走るのは、バスに追いつくためだ。最終バスを逃すと、我が家まで30分弱は歩かなければいけない。酒を飲んだ後だと結構しんどいのだ。

 一昨日は、ほどほど良い感じで飲んで酔った後で、ふと時間を見ると最終バスの時間が迫っていた。時間ギリギリで会計してバス停に向かうと、雨が降ってきた。雨の中を歩いて帰るのは嫌なので絶対にバスに乗りたい。時計を見るとバスの時間まで5分ほど。走れば間に合う。でも雨足は強めだ。

 少し前に深夜バスに乗ろうと思ったら、臨時ダイヤで深夜バスがサービスをやめていた。バス停でしばらく待っていたが、あまり遅れない最終バスが10分も来ないので、おかしいと思ってバス停を凝視すると、消えかけた字でサービス休止を知らせるプリントが貼ってあった。コロナ禍の影響だ。

 そこで仕方なく歩いて帰ったのだが、次の日の体調の悪さが通常とは比べ物にならないくらいに最悪だった。飲んだ後に歩くから罪悪感は少な目なのだが、気分が悪くてダラダラするので半日は捨ててしまう。そんな経験をしないためにもバスには間に合いたい。そんな思いで雨の中を必死で走る。

 バスにはギリギリ間に合ったが、酔って走ったのでガツンとキマッた。マスクをしているので非常に苦しい。息も上がっている。バスは混み合っているので、マスクを外すのも躊躇われる。でも、頭がクラクラしてきたので深い呼吸を求めてしまう。結果的に、歩いて帰った時と同様の二日酔いだ。

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バス停まで走る道すがら、意識が遠のきそうになると浮かぶ花畑の図。