あの話を聞かせて

 誰にでもひとつは「とっておきの話」があると思う。本人が認識していなくても、聞いた相手によっては忘れられない面白話だったりすることもあるだろう。逆に、本人にとっては一撃必笑のいわゆるテッパンだと思っていても、相手にはあまり伝わらないこともある。見る角度によって違うのだ。

 僕の友達が看護学校時代に、追試を重ねた挙句に留年してしまったという話が好きだ。結構厳しいんだと思って聞いていたら、その学校始まって以来の留年だという。そんな不名誉な一号生になってしまったという、その人の軽さと、なんとも言えない不器用さが笑える。何度聞いても笑えるのだ。

 本人としても、大して追試の準備をしないで臨んだという。先生からは脅されたりしたが、過去に留年した人はいないという実績があるから安心していたそうだ。つまり、ナメきっていたのだ。その当時の彼女のことを知らないから想像に過ぎないが、おそらく態度にも出てしまっていたのだろう。

 ここからは僕の想像だが、その学校で留年した人がいないというのは、もしかしたら留年した人はみんな途中で辞めちゃったからなんじゃないかと思った。それに対して、彼女は同期に遅れること1年後に見事卒業(看護学校を修めることって卒業って言うのか?)した。根性があったのだと思う。

 そう言う、全体的にはトホホだけれど、本人のガッツも見られる話だから聞くと元気が出る。楽しくなる。でも、話としては不名誉なことではあるので、大勢に聞かせる話でもないのかもしれない。そうは思いつつ、それでも誰かに聞いて欲しい話なので、つい人前で話を振ってしまうのであった。

 本来なら、この話を聞く前の前説として自分のトホホな落第話をしなければいけない。僕は、合宿免許の仮免を2回落ちている。どうせ合宿だから受かるだろうと適当に運転していたら、早々に教官ブレーキを踏まれてしまった。車線をはみ出していたのだ。この話は実に面白くない。不愉快だし。

f:id:SUZICOM:20200615104638j:plain

一方通行地獄の道。話は会話形式が良い。一方的なのは疲れる。