レーザーディスクはムーディ

 日々ずっと何かを覚えては忘れていくので、常に何かひとつは「アレなんだっけなぁ」と思い出せない健忘事項がある。そのうち何を思い出そうとしていたのかさえも忘れてしまうので、その事項は正式に消去されるような気がする。消去される前に記憶からサルベージしてあげたいと思っている。

 最近、旧い歌謡曲や洋楽のAORなどを聴くようになった。それは、このジャンルでの再発見が多いからだ。忘れかけていた曲がゴロゴロと落ちていて、その都度「あ、ここにいたんだ」という気持ちになる。懐かしいだけじゃなくて、ちゃんと良い曲なのも嬉しい。ただ、この辺の記憶は怪しい。

 曲調やアレンジの古さで「懐かしい」と思っているだけで、実際にむかし聴いたことがあったかは判然としない。有名曲などは後から聴く機会もあるので、それを改めて見つけただけな場合も多い。でも、そうやって聴いてしまった曲は、旧いフォルダに記憶されるので懐かしい領域に保存される。

 記憶を改ざんしているのである。ただ、それは時系列で理解したがる僕の性質とも言える。覚えた時系列というより、大雑把な旧い曲と現代の曲との振り分けだ。最近はじめて聴いたとしても、それが旧い曲なら、すでに知っているオールディーズと同列に考えるので「新しい曲」とは認識しない。

 これらの後付け記憶による「旧い、懐かしい曲」は、自分の記憶と紐づけられたメロディに後から介入することはない。みんなと遊んでいた時に聴いていた「あの曲」が、最近聞いたその頃の曲と差し代わることは、今のところないようだ。自分の実人生のサントラを改ざんすることはしたくない。

 そんな歌謡曲の再発見では「ムード歌謡」というのが常に僕の胸に引っかかっている。大人の世界の曲なので恥ずかしいのだが、メロディがキャッチーなものが多いので口ずさみたくなる。でも、詩の世界がアダルトなので子供が歌うとアンバランスだ。あのジャンルの名曲は掘ってみたいものだ。

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旧い建物を見ると懐かしさを覚えるが、その記憶はTVの刷り込みだ。