思春期ワープ

 懐かしい曲を聴いた瞬間、それを聴いていた「あの頃」に戻ってしまうことがある。僕は、高校時代は海外のヘヴィメタルしか聴いていなかった。それが、大学で部活の寮に入った時に同室の同級生から却下された。その部屋は同期部屋というか、先輩からのシェルターだったので全員一致だった。

 仲間から自分の趣味を否定されてガッカリしたかと言うと、そこは「ま、そうなるわな」と普通に受け入れられた。むしろ、その少数派なことが魅力だったので、そっちの趣味はしばらく封印することにした。そこで同室の人間が聴いていたのはビーズだ。カタカナにすると非常にカッコ悪いけど。

 その当時はメチャクチャ流行っていたと思うけれど、洋楽かぶれの人間にとっては興味の対象ではなかった。それを、半ば強引に聴かされることで耳になじんでしまった。ただ、ちゃんと認識して聴いてたわけじゃないので、ひとつひとつの曲については何も知らない。シンプルに曲名を知らない。

 それでも、頭の中にこびりついたイメージは拭えないので、今でも鼻歌と共に思い出すことがある。でも、もはや薄ぼんやりとしか覚えていないので、近所のレンタル屋さんで音源をゲットしてみた。このところ、スマホと同期して聴きまくっている。懐かしさで泣きそうだ。実際には泣かないが。

 せっかくなので、別の思い出も補強しようと思い、高校時代に聴きまくっていたメタルの音源も借りてきた。あの頃はCDも持っていたと思うのだが、ある時期に「メタル断ち」したので大幅に処分してしまった。それから20年ほど経ち、懐かしい友達に再会したいような感覚で聴きたくなった。

 イチバン好きだったイングヴェイ・マルムスティーンのアルバムを久しぶりに聴いた。数年前にベスト盤は手に入れていたのだが、やはり当時はアルバムで聴くものだった。そのアルバム曲の中で、当時もっとも聴いていた曲を再生したら、コッチは本当に泣けてきた。ただ、ずっと聴くと飽きる。