リッスン・アンド・レッスン

 音楽を趣味程度に聴いて30年くらい経つが、自分の好きなジャンルや掘り下げているアーティストなどは特にいない。その時々でハマったりすることはあるが、継続的にずっと追いかけるということができない。いっときのムーブメントとして過ぎてしまう。付き合って別れるの繰り返しである。

 ジャンルに関しては、一度聴けるようになったジャンルはずっと残る。それは体験的に「こういう音楽がどんなシーンに合うか」を実感できたから身についているのだと思う。身についたと記すと演奏家としてマスターしたように聞こえるが、あくまで聴き手として「楽しめる」という意味である。

 僕は演奏をしない。音楽の楽しみ方は聴くだけである。かつてはアルバム単位で聴くことがマストだと思っていた。それは、僕が参考にしていた音楽誌のライターたちが「アルバム単位で聴く」ことを推奨していたからだ。若い頃は我慢強かったので、多少退屈なアルバムでも聴くようにしていた。

 そうやって無理強いして聴くと、人よりも努力して手に入れた聴取能力のように感じられるのだ。普通に聴き流していただけじゃ到達できなかった境地に達したと感じられた。僕にとって、それはローリングストーンズだ。当時、レンタル屋に唯一置いていた「アンダーカヴァー」というアルバム。

 このアルバムは、全然ストーンズを代表するような作品ではない。何故このアルバムだけがレンタル屋に置いてあったかといえば、おそらく当時の最新作だったのだろう。そう思って調べたら、1983年の作品となっているので、僕が中学生の後半に借りたはずだから5年以上経っていたようだ。

 最初のとっかかりはノーヒントなのだ。ただ、雑誌でアーティストやライターが「ストーンズは最高」と言うので、こちらも「何か聴かなきゃ」と思ってしまったのだ。そうやって手に取ったのが先のアルバム。頑張って1曲めだけは好きになった。この「頑張って好きになる」行為が大事なのだ。

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この世界に無音の場所はなく、どんなに静かでも静寂の音がする。