つぶらな目のムーブ

 現在、ある小説にハマっている。その本の作者、森博嗣という作家の作品を読みはじめて、10年くらいは過ぎたのだろうか。いつ読んでも、どの本でも感じるのは統一されたクールさだが、それは同じ世界観の作品群を好んで読んでいるからだろう。あとは、すこしだけ頭が良くなった気がする。

 一応ミステリーの部類に入るのだと思うが、単純に事件が起こって、それを探偵役が解決するという作品はあまりない。初期の作品(って、どこまでが初期なのか分からないが)では、探偵と助手の構図で話が進むようなのも多かったと思う。でも、探偵役が研究者なので解決には関わらないのだ。

 そのうちに研究者は偉くなり、忙しくなり、現場には現れなくなる。行く先々で事件に巻き込まれるような2時間サスペンス展開は見られなくなり、時間も現代から近未来へとシフトして行く。登場人物も変わり、ある種のサーガ形式のように見える。ただ、この表現は【ネタバレ】かもしれない。

 現在読んでいる本は、時代設定が200年後くらいだと思う。現代人の目に触れる範囲として、それくらい遠い未来にしておかないと本当の時代に追いつかれてガッカリする場合が考えられる。だから、生きている間には見られない時代の方が、読んでいて安心するのだ。というか、冷めずに済む。

 すでに20世紀のサイエンスフィクションには、この現象が見られるものが多い。曲の歌詞などにも、ちょっとした未来のつもりで書いた年号がすでに過去になっていたりするものもある。例えば、キリンジの「太陽とヴィーナス」という曲を聴くと、出だしの歌詞で「あっ」と思ってしまうのだ。

 いま、ここで未来のことを記している割に、僕は本を「紙に印刷された状態」で買っている。紙を削減して資源を守ろうという意見には賛成するのだが、これらの本はすでに印刷されたものだ。僕が買わなくても誰かが買う。だから、書店がなくなるまで、僕は印刷物を購入する側の人間だと思う。

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とりあえず、近未来っぽい建物の写真をストックから探してみた。