カセットテープとスポーツカー

 僕が初めて勤めた会社で、僕の教育係だった人は、かなりクルマに詳しい人だった。1年ほどして、その人からスポーツカーを譲り受けた。マツダの有名なスポーツカーだったが、何故かタダで貰えた。クルマに興味がうすい僕にはオーバースペックではあったが、それが初めてのマイカーだった。

 そのクルマの運転に慣れることなく、その後1年くらいして手離してしまった。それでも、そのクルマに乗る楽しさはあった。クルマという個室を手に入れたことによる満足感もあった。当時はまだ、カーステといえばカセットデッキが一般的だったと思う。いや、中古車だからさらに数年遡るが。

 クルマの中で聴くためのテープを家で作っていたので、家のコンポもカセットデッキ付きの製品を使っていたようだ。もう20年以上前の話だ。昨日のことにように覚えているし、その頃と比べた今の自分が大して成長してないことに愕然とする。それはさておき、カセットテープ編集の話である。

 スポーツカーの中で聴く音楽ということで、どうしてもスピード感のあるハードなロック(狭義のハードロックではない)を選びたくなる。その頃の僕は、社会人になってメタル離れを始めた時期だ。なるべくヒットチャートものや国産のバンドものを聴くようにしていた。それはモテたいからだ。

 学生の頃に散々刷り込まれた「メタルはモテない」という事実により、当時僕が持っていた(狭義の)ハードロックやメタル系のCDはほとんど処分した。単純にモテないという理由だけでなく、その頃はその手の音楽を「いつか卒業するもの」として聴いていて、その時期が来たとも思っていた。

 で、一度手離したハードな音源たちだが、ドライブのシーンにはかなりフィットすることが分かった。ほとんどを手離したと言っても、その中には「ま、これは大人のリスニングに耐え得る」というものもあるので残していた。それらの中からファストチューンだけを選び、ドライブ中に流すのだ。

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写真は朽ちた旧車だが、当時の愛車のコクピットは機能美の塊だった。