おにぎり5個と500円

 今でも食欲旺盛なアラフィフ男だが、振り返れば、学生時代の食欲は底なしだったと思う。とにかく、いつも腹が減っていた。学校帰りにラーメン屋に寄って味噌ラーメンを食べても、家に帰ったらご飯3杯は軽く平らげていた。あ、そういえば「平らげる」って言葉は初めて使ったかもしれない。

 授業中は常に空腹との戦いで、中学生時代はいつも腹が鳴っていたので、イスを引きずる音でごまかしたりしていた。隣の女子生徒から不審がられるくらいに、しょっちゅうイスを引いたり軋ませたりして遮音していた。たぶん効果はなかっただろう。腹の音の方が後を引いて、響いてしまうのだ。

 中学生の時に関しては、毎日、腹を下していたことも大きい。あれはきっと牛乳のせいだ。体が欲するままに、毎日牛乳をガブガブ飲んでいたから身長も伸びたし、腹の調子も悪かった。それでも、学校のトイレ(特に大の方)は行きにくい仕様になっている。学年に1つしかトイレがないからだ。

 広いトイレなので、そこにはいつも不良に憧れている生徒がたむろしていた。ちょっとヤンチャと評されるタイプだろう。その中で、腹を下した人間が排便するのは勇気がいる。イジられ必須だ。我慢の限界がきたら飛び込めばいいや、と思って耐えていたら、卒業まで行かずに過ごしてしまった。

 高校生になっても腹の調子は良くはなかったが、その頃には多少知恵もついている。同級生の視線が鬱陶しいだけなのだから、違う学年のトイレに行けばいい。その発想をさらに進化させ、僕は教職員トイレに行くことにした。大人は、トイレに入っている他人をイジるような真似はしないだろう。

 おっと、冒頭では高校時代の無限食欲について語ろうと思っていたはずなのに、気がついたら真逆の話をしてしまった。世の中は表裏一体ということだろう。嫌いと避けているものが、実は大好きで大事だったりする場合もある。トイレには暗い思い出ばかりだけれど、トイレが落ち着くのも事実。

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トンネルの先に光が見えるが、決して希望の光ではなく、ただの出口だ。