インサイド、アウトサイド

 誰でも「下半身に関する悲しい思い出のひとつやふたつはある」と言ったのは、狩撫麻礼・原作、たなか亜希夫・作画の、個人的な伝説の漫画『ボーダー』の主人公、蜂須賀だ。この蜂須賀というキャラクターを通じて、狩撫麻礼が世の中に言いたいことを伝えてくる。つまりは狩撫麻礼の言葉だ。

 狩撫氏は、2年前にお亡くなりになった。その後に出された追悼本などで、その人となりに触れることができた。原作した漫画はかなりの数になるので、これから何度でも読むことができる。ひとつ不思議なのは、小説ではなく漫画原作者として世に出ようとしたこと。そこに独自性があると思う。

 ここでは狩撫氏のことを話したかったわけではないのだが、冒頭の引用があったので、長めの補足として記しておいた。つまり、ファンなのだ。で、下半身に関する悲しい思い出の話だが、僕も小学生の頃に情けない原体験がある。少年野球でキャッチャーだった僕の拭いきれない茶色の思い出だ。

 キャッチャーの姿勢は、ご存知の通りしゃがんでいる。旧式の便器を使う際の「ウンチングスタイル」というヤツだ。だから、便意を催すと抗い難い。自然に出そうになる。当時、我が家のトイレは旧式だったので、体は条件反射的に「出す」状態になってしまう。それでも、試合中はガマンした。

 試合が終わって、整列して挨拶して、反省会もそこそこにダッシュで家に帰った。ハッキリ言って整列のくだりは記憶にない。だが、便意をガマンして試合してたことがバレると、即日ソレ系のあだ名で呼ばれる残酷時代だ。そんなあだ名で呼ばれていた記憶はないから、ギリギリ耐えたのだろう。

 急いで家に帰り、トイレに駆け込んだ。いや、走ると緩むので尻に力を込めて丁寧に歩いてトイレに入った。そこが限界だった。ユニフォームを脱ごうとした瞬間に脱力した隙を突かれてしまった。しばし茫然。でも、これが試合中じゃなくて良かったという思いも強く、変にホッとしたのだった。

 

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電車内で突発的に来る便意は地獄だが、今までは奇跡的に我慢できている。