圧倒的座高の持ち主は語る

 子供の頃の身体測定では、各クラスごとに保健室でパンツ一枚にさせられて測定された記憶がある。男女は別だっと思うが、その辺りは正確には覚えていない。小学生は基本的に白ブリーフが多かったが、中には絵柄が入っていてからかわれる生徒もいた。学校がイジリの原因を用意しているのだ。

 そういえば、パンツの思い出でひとつ印象的なシーンがある。白ブリーフ勢が多数を占める中、唯一チェックのトランクスを履いていた子がいた。それを見た僕が思わず「お父さんのパンツ履いてきちゃダメだよ」とからかうと、彼が「うちのお父さん死んじゃったんだ」と返された。ご、ごめん。

 むかしから、僕にはこのような迂闊発言が付いて回る。瞬発的に見たまんまのことを言うクセがついているのだ。言うのが治らないのなら、逆にフォローを上手くすれば良いのだが、そういう気遣いも下手だ。だからと言って極端な失言で友達を失うことはない。それは相手の優しさに拠っている。

 話を戻すと、身体測定の場面である。僕は小さい頃から身長が高く、中学生くらいまではコンスタントに伸び続けて、現在でも188センチくらいあると思う。毎年伸びるので身体測定は楽しみではあったが、ひとつだけ無駄と思うことがあった。それは座高だ。あれで楽しさが相殺されてしまう。

 身長が高い分、座高も高くなる。僕同様に大きい生徒は他にもいるが、そんな彼らよりも圧倒的な座高なのだ。つまり「足が短い」という評価になるのだ。実際は短足とからかわれるほど足が短いわけじゃないので、この身体測定の日の数値イジリだけで終わる。どうでも良い、無駄なストレスだ。

 何かの本で読んだのだが、座高は「内臓が発達していれば健康なので、座高が高ければ内臓も発達している」という謎の根拠に基づいて計測するようになったようだ。この形骸化した根拠を誰も見直さず、測り続けていたのだ。2016年には除外されたそうだが、ずいぶん長い間放置したもんだ。

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座高が高きゃ重心も低く、バランスも良いはずだが、何故かよく川に落ちた。