予算の話はよさんかってか

 僕はむかしから、計画を立てて行動するのが苦手で、行き当たりばったりのアクシデントを何よりも重要視するところがあった。でも、会社で働く場合は予算などがある。上司から、来月の営業計画のようなもの(というか、まさに営業計画だが)を提出するように言われるのが何より苦痛だった。

 そういう計画書というのは、誰に向けたものかという裏テーマがある。コレは営業部長が見るのだから、その人向けにアピールする内容にしろという暗黙のメッセージが、実はある。僕は最初、その手の空気をシカトした。ハタチ過ぎの若気の至りだが、それを押し通しても良かったように思える。

 できる男は達成可能な予算を計上し、しかも前年を少し上回るというのが理想のようだった。ギャンブル的に大幅アップする月もあれば、売り上げがまるで立てられない月もあるという人間は、信用されない。僕が重要視するアクシデンタルな人間というのは、つまり後者の信用されないタイプだ。

 仕事では、堅実な方が良いと思うようになった。別に、誰かにアピールするための演技をしなくても、真面目に積むしかないなと割り切った。予算計上する際には、単純に目標を書くようにした。見込みというより、その数字に近づけるための営業計画だ。苦手な計画でも、努力目標なら頑張れる。

 なぜ今さらこんなことを記しているかと言うと、最近すっかり予算や目標などを立てる生活から離れてしまったからだ。いや、実際には小さい予定はあるし、あてにならない目標もある。でも、以前のように目標となる計画書を持ち歩いて、常に数字をシビアに追求することはなくなってしまった。

 成長するためには、変わり続けなければいけない。結局いつも、僕は同じ言葉に励まされる。「変わり続けてきたから、変わらずに生きてこられた」という、もはや出自も分からない言葉だ。僕の好きな人間、輝いている人間はだいたい同じことを言う。僕は、変わらず変わり続けているだろうか。

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旧型のロボットみたいな水門。誰かに監視されているような錯覚を覚える。