色で塗りつぶせ

 屋内自粛の暇つぶしとして、知り合いから塗り絵をもらった。プロの画家さんが描いたアウトラインだけの絵に「好きな色を塗ってみそ」というサービスだそうだ。もらった絵は複雑な植物を描いたもので、全体像を把握するのが難しい。僕は塗り絵がとても苦手なので、これで克服したいと思う。

 僕が小学生の頃に大流行したガンプラも、一度も色を塗らなかった。組み立てが丁寧かというと、そこも雑で、早さだけを追求していた。プラモの箱を開けたが最後、さっさと組み上げないと気が済まないのだ。それで、作り終わったモビルスーツを箱に戻して、以後は興味を失くしてしまうのだ。

 大学生の頃、同期のアパートの部屋に行くと、懐かしいガンプラの作りかけが置いてあった。箱をみると、各パーツをバラバラに組んだ段階で色付けをしていた。なるほど、この段階で塗れば、仕上げ後に筆が入らないなどの不手際がない。あの頃の同級生たちは、こんな手間をかけていたんだな。

 僕がガンプラの色塗りに真剣になれなかったのは、あれが量産品だということがあった。結局、どんなに綺麗に仕上げても、作ったのは自分じゃなく「おもちゃメーカーじゃないか」という気持ちが拭えなかった。むしろ、作り終わったパーツのプラ枠を眺めて「何か作れないか」と考えたものだ。

 ゼロから物を作ることが最上だとするならば、プラモ作りは10だったのもをメーカーが1にしてくれて、それを10に組み上げて行く行為だ。良くて10なのだ。でも、ゼロから発想したものは、評価する相手によって価値は無限大だ。当時はここまで考えていないが、何かが腑に落ちなかった。

 この発想で、塗り絵にも同じような感覚を持っていた。ただ、本当のことを言うと「塗り絵は違う」と分かっていた。あれは色彩感覚の訓練であり、センスを磨くことができると思うのだ。そうやって色の感覚を磨いていれば、ガンプラでも独創的な色付けができたのかもしれないと、いまは思う。

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夜景をぼやかすと、無数のモノアイに囲まれたような写真になる。