スパイシー・ナイト・アンド・デイ

 むかしから怪しい店に惹かれる性分である。その怪しさは、自然が醸し出す怪しさ、つまり劣化によって怪しくならざるを得ない状態が理想である。ボロくて汚い店である。でも、人並みに清潔を好むので、その状態の店だと入れない。見て楽しむだけだ。ただ、そこが混んでいると入りたくなる。

 本当にいい店がボロいわけはないのだが、個人店で、しかも利益度外視のサービス価格で提供していると改装する暇がない。つまり、顧客本位の優しい店というのは、儲けが出ないから繁盛しても忙しいだけなのだ。数年前までは、そういう店を探していた。でも、今では遠慮するようにしている。

 東京の東側、下町にはその手の店が結構残っている。噂を聞きつけた遠方からの酔客たちが来るので、さらに拡散されることになる。でも、その店は地元の「食えない若者」を育てるために安くサービスしているのだ。そんな店をよそ者が、グルメ情報サイトにレビューするなんてかたはらいたし。

 ボロい店とはちょっと趣は変わるが、エスニック系の店は総じて怪しい外観である。海外出身の人が出店する際に、日本人と店作りの理念が違うから違和感が出るのではないかと思う。その理念の違いを語れないので偉そうなことは言わない。ただ、派手でゴテゴテしてチープという共通点がある。

 数年前に、垣根涼介の「君たちに明日はない」というシリーズの本を読んで以来、エスニック系の店によく行くようになった。それまでもアジア系の飲食店は好きで行っていたが、頻度が増したと思う。インド、タイ、ベトナムなどの料理自慢の国の料理は、どれを食べても旨くて元気になるのだ。

 かつて合コンに励んでいた頃は、僕が主催する飲み会の店は沖縄料理屋と決まっていた。沖縄料理屋は、エスニックと同様に旨くて元気になる店が多いのだ。本当は東南アジア系の店が好きなのだが、好き嫌いを考えると沖縄料理は間違いない。そして、ビール好きの僕はオリオンが大好きなのだ。

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その土地にしかないコンビニは、外様の自分から見るとエスニックだ。