数十億とおりのアングル

 昨日は出先での作業となったが、電車に乗って移動する際には緊張感が伴うようになった。なるべく周囲の人間と距離を取ろうと思うので、結界を張り巡らせているような感覚だ。でも、僕の結界など誰も知らない。余裕で突破されるし、突破した人を責めることもできない。責めるつもりもない。

 常に気を張りながら、いつもより疲れる移動を経て世田谷の事務所に顔を出す。そこの社長は意識が低いタイプだったので、このコロナ騒動に関してもシカトを決め込んでいるかと思っていた。でも、どうやら配慮はしているようだ。その証拠に事務所には現れなかった。自宅待機しているらしい。

 まあ、そこの事務所に行って社長に会える方が珍しいので、いつも通りとも言える。パソコンでの入力業務のような仕事なので、事務所詰めの人間同士も接触は薄い。いつものように振られた作業をし、担当に確認してもらって「OK」が出たら終了。その間に業界情報を聞いて少しだけ賢くなる。

 新しい情報ということではないのだけれど、ある会社について自分が見ている感覚とは違う意見を持つ人の話というのは興味深い。言われてみれば、その立場からだと「そう見えるのか」と感心してしまう。こういう小さな気づきがあるから、やはり家だけで完結する作業では済ませられないのだ。

 とはいえ、このご時世に外出するのは疲れるので、あまり多くの外部での仕事は入れていない。疲れるというのは、意識して行動しているからだと思う。無神経な行動はできないし、したくない。家での楽しみ方もいろいろと見えてきた。だから、これを機に極端なインドア派になる可能性は高い。

 外に出るのが怖いという感覚を持ちたくないとは思っている。感染拡大が収束した時に、出不精になってしまいそうだからだ。出かけるのは怖くない、ただ面倒臭い。それで良いと思う。怖いと思うと、それは苦手意識に変ってしまいそうだ。苦手なことは増やしたくない。まあ、気の持ちようだ。