いつまでも君の図書館

 前に一度本を貸したら、それを返されるたびに新たに別の本を貸すという関係の人がいる。僕は移動図書館で、彼女の好みを類推しつつ新機軸となるような本を提案する。向こうはほとんど言いなりなのだが、それでも数冊を持っていくと、彼女の意思で何冊かに絞って持って帰る。そんな関係だ。

 もともとあまり本を読むタイプではなかったらしいのだが、電車通勤の合間を持て余すというので、たまたま持っていた本が読み終わったところだったので貸してみた。すると、その本が面白かったらしく、次に会った時には読み終わっていた。多分彼女にとって初めての読書体験だったのだろう。

 いくら面白いからといって、読書に慣れていない人が早く読むのは難しかったりする。最初に貸した本は、そういう意味では手頃なページ数で、かつ軽妙なテンポで進む読みやすい本だった。だから、アスリート的に言えば「ゾーンに入る」ような感覚でサクサクと読み進められたのだと思われる。

 その感覚は共感できたので、このまま読書が習慣化すれば読書の面白さに目覚めるだろうと思った。なので、次のオススメを紹介するときはちょっと考えた。エンタメ系なら簡単に読めるだろうし、手軽に面白さを得られるだろう。でも、頭の喜びとしては、少し難解な方が気持ち良かったりする。

 なので、ジャンルを絞らないように、いろんなのを混ぜて紹介した。毎回、エンタメ小説とエッセイとSFなど、変化がある作品を混在させて渡してきた。ちょっと難解で読みにくいかな、と思った本を面白がったりするので、彼女の「読書力」はかなりポテンシャルが高いように思ってきたのだ。

 今年から始めた「本の交換日記」だが、別に彼女とは恋愛関係にあるわけじゃない。僕が選ぶ本には、なんら恋愛的なメッセージもないし、そもそも彼女は既婚者で不倫願望もないだろう。ただ、読書好きとしては最高に楽しい「本を選ぶ」という至福のときを過ごさせてくれる大事な人ではある。

f:id:SUZICOM:20191222145826j:plain

本と同じく、オススメのラーメン屋もよく聞かれる。聞かれたら答えるが、通ではない。