生活と暮らし

 20年前にインド旅行した時、安宿に泊まっては街の力に圧倒された。ここは「なんて力強い国なんだろう」と、いかにも全部見たかのような感想を持っていた。でも、安宿があるのは観光客が多く泊まるエリアで、僕が街の力と感じたものは地元民の営業行為による圧力に過ぎないと今では思ったりする。

 ちょっと考えれば、日本でも同様の力を発しているエリアはたくさんある。僕の住む街から近い場所でいうと、東京の「浅草」や「上野」なんかは常に発熱しているような街だ。インド旅行中も、泊まった宿の窓から通りを見渡した時に「アメ横みたいだな」と思った。その街は市場で問屋で観光地なのだ。

 富の集中するところに人間は集まるので、最初はそのインド人の力が圧倒的過ぎて疲れてしまった。疲れると「北に逃げる」という東北人ルーツの習性があるのか、その時もインド北部のヒマラヤが見える町に移動した。深夜の長距離バスで荒々しく運ばれた先は、スノーリゾート然とした高原の町だった。

 その街は静かだったが、しっかりと異国であることは実感できた。観光客向けのレストランがことごとく不味いのだ。でも、それはツーリスト向けの店に入っているからだと後で気付いた。欧州人向けの料理を雰囲気で出しているので、味付けが適当なのだ。ローカルの店に入れば、普通に田舎料理である。

 インド旅行の思い出語りをしようと思ったのではないので話を戻すと、自分の好みは「田舎派か、都会派か」という問題だ。まあ、別に大した問題ではないのだが、いま現在は都会の近くの辺鄙な町に暮らしている。特に目立った特徴のない町だ。ここは都会でも田舎でもない。ただ、田舎臭い町ではある。

 ここ以外のどこかで暮らすとしたら、どんな街を自分は想像するだろう。いまの習性を考えると酒場は何店舗か欲しい。落ち着く中華屋やボリュームに物を言わせるような定食屋もあれば助かる。そんなイメージを並べると、どうしても商店街の近くが浮上する。それはたぶん、田舎にはないものだと思う。

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上野動物園前にあった定食屋。ここにはなんでもある。