トントン拍子、変拍子

 仕事のグルーブが最高に高まるのは、最終確認で先方からのゴーサインが出るときだ。複数の提出先から同時に「確認オッケー」の返事が来ると、気持ち良くなる。そうやって勢いが出ると、次の提出先にも強気というか、アッパーな気持ちで連絡してしまう。俯瞰で見たらナメた感じになっているだろう。

 ただ、調子いい時ほど落とし穴はある。僕の経験ではトントン拍子は2件しか続かない。3件目で反応がシブくなり、4件目は音沙汰なしなんてこともある。メールと電話の両面で攻めても、そもそも担当者に繋がらないことはよくある。そのため、何としても担当者の携帯番号は握っておきたいところだ。

 僕が直接に先方を知っているわけじゃなくて、発注元からの依頼でやっている仕事だと携帯での連絡はできなかったりする。そんな時は発注元に戻して連絡させればいいのだが、その発注元が「携帯は知らないからそっちでやって」と言ってくる顔が見える。他力本願寺の住職め、仕方ない、やってやるか。

 仕事での僕は、かなり飽きやすい。実務の時は割と集中力が続く限り行けるのだが、人に物を勧めたりする仕事には飽きてしまう。かつて、営業職だった頃は自社の製品を売込まなければいけない。その売り文句をなんども反芻して、喉から血が出るほど繰り返すのが仕事なのだ。その文言に飽きてしまう。

 以前も、ある製品の売り込みで地方を出張した時に、何軒か連続で成約をもらえたことがあった。あまり好きではないセールスの仕事ではあったが、成果が出ると人並みにやる気は出る。そして、次の顧客に向かって商談を始めた瞬間に「飽き」がきてしまった。セールストークへの拒絶反応が顕れたのだ。

 気がついたら商品説明の言葉をバラけさせ、自分なりにリミックスしていた。もともと自分で考えたフレーズを解体して、伝え方を変えようと思ったのだ。でも、先方の反応はイマイチ。そこで話を切り替えて、世間話に終始し商談を終えた。もちろん成約は取れない。それ以降、営業職には就いていない。

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目的地に向かっている時でも、ふと横道にそれたい願望が常にある。