思考の波に酔う

 考え事をしながら飲むと、知らぬ間に杯を重ねてしまう。酔えば酔うほど思考は鈍化するはずなのに、酔いで先鋭化するような錯覚を覚えている。先鋭化するわけじゃなく短絡的になるだけなので、最後は考えていたこと自体「どうでも良いや」と捨て置いてしまう。あまり建設的だとは思えない。

 でも、考え事がアイデア探しのようなものの場合は、酔いで鈍化した脳でも悪くない発想が浮かんだりする。それを、その場で自分宛にメールしておけば、素面の時に見て判断したり参考にすることができる。でも、絶対そんなメールは打たない。具体的な仕事の行動を取ると酔いが覚めるからだ。

 結局、そのアイデアは記憶の彼方へと消え去り、天からの授かりものではなく自力で仕事をこなすことになる。そうやって仕事脳を鍛えていると、基礎体力がついてくる。オーダーに対して条件反射的に素案が浮かび、それを具体化することができる。ただ、その案は手クセにまみれているのだが。

 昨日まで、いくつかの案を複数のお客さんに提出する業務に追われていた。今も追われているのだが、昨日よりは落ち着いている。昨日提出した案を、夕方、酒場に出向く前に見直したら自分の手クセが色濃く出ていた。つまり、どの素案も似通っているのだ。中身は違うけど、見せ方はほぼ同じ。

 酒場でずっと、そのことを悔やむというか、何とかならないかと考えていた。提出した案がすべて一発オッケーだった場合、修正することはできなくなってしまう。今から帰宅して、別案を追加提案しようかと思ったが、混乱しそうなのでやめた。とりあえず、その段階でできるのは飲むことだけ。

 とはいえ、早めに帰って手直ししようと思っていたハズなのに、気がつくと店を移動して、その店の閉店まで粘るという。結局「なるようになれ」と飲酒脳の短絡的思考に陥っていた。今朝になり、それらの仕事を改めて確認すると、意外と悪くないと思えてきた。自作自演のひとり芝居、終演。

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ミラーに引っかかる枯れ葉のように、浮かんだアイデアの記憶は脆弱だ