コピーロボットの氾濫と反乱

 僕は背が高いだけで、顔面の特徴といえば「顔がデカイ」こと以外には特に目立った点はない。ヒゲを生やしていれば「ヒゲ面」だし、そこにメガネを掛けていれば「ヒゲメガネ」だが、それは変更可能なアイテムなので顔の特徴というワケではない。あとは、ニキビ跡が目立つ汚い肌ということくらいか。

 特徴がないせいか、ちょっとした髪型や体重の変化などに気づかれることはない。ただ、深層心理的に印象が変わっているせいか、ちょっとだけ怪訝な顔をされることはある。それとは対照的に、ヒゲを剃った後やメガネを掛け忘れた時には「どうした?」と聞かれる。小道具の方が本体化しているようだ。

 僕の顔の役割は「ヒゲとメガネを置く土台」程度のもののようだ。僕もルックスに自信があるワケじゃないので、多少の特徴としてヒゲやメガネが機能しているのなら、それに乗りたいとは思う。ただ、ほんのすこしだけ釈然としない気持ちはある。そんな思いから、たまにわざとメガネを忘れて出かける。

 こんな特徴のない顔なのだから、世界中に、特に日本中に似ている人がいてもおかしくはない。学生時代に、他の大学のラグビー部に僕に似た人間がいると仲間に聞いた。実際に本人を見たのだが、確かに言われてみれば似ている気がする。ただ、僕よりもシュッとしていて、モテそうな感じではあったが。

 その時に、口の悪い同級生に「お前、嬉しそうだな」と言われた。ずっと似ていると言われていた対象が変なヤツじゃなくて良かったな、というイジリだ。僕が嬉しかったかどうかは覚えてないが、いま思うと気になる点がある。向こうにしても、多少は僕に似ているのだ。そこをどう思ったかは気になる。

 どちらかというと、その似ている対象の方が濃い顔をしている。ということは、向こうから見たら僕は似ているようには見えないのではないか。そう考えると、なんだか片思いのような虚しさを感じる。今や、その人間の顔も思い出せないが、今でも似ている部類なのだろうか。僕には知る由もないのだが。