ハートのビートが聞こえるかい

 僕は、ヒップホップ調に言うなら「TV生まれマンガ育ち、面白そうなヤツら大体友だち」って感じで青春時代を過ごしてきたと思う。後半の面白そうなヤツらに関しては、大体友だちになりたいと思っていたと言い換えておこう。要するにTVっ子で、大事なことはマンガから教わってきたのだ。

 少年野球ではマンガ「キャプテン」の影響を強く受けていたし、TVドラマの影響でラグビーをはじめた。ついでに言うと、TVドラマの影響で当時の不良にかなりの嫌悪感を持っている。見ていると「こんな風にはなりたくない」との思いが強く、不良に憧れる気持ちを持てずに育ったのである。

 ヤンキー漫画のジャンルが確立した頃でもあり、オールドスクールの不良をデフォルメした作品が多かった。マンガの中で語られるのは現代というよりは、作者の近い過去という感じがあった。だから違和感なく読めたというか、それらは僕が学生時代の段階でもファンタジーの領域だったと思う。

 とはいえ不良が壊滅した時代はないし、どの時代にもその時なりの不良像があると思う。僕より若いタレントが「元ヤン」を売りにしているのを見ると、根深いメンタリティの普遍性を感じる。僕が避けてきた道を、後ろから来た人間が好きこのんで通る。そして、何食わぬ顔で通り過ぎるという。

 以前、ある元ヤンの女性タレントが「元ヤンなめんなよ」と言ってるのを聞いた時に大きな違和感を感じた。これは、言い方を変えると「ちょっと甘い顔見せたからってなめた真似すんなよ、裏こいや」という現役ヤンキーの恫喝のように感じたのだ。全然「元じゃないじゃん」と思ったのである。

 僕の好きなタモリさんが以前、とある太っちょキャラの芸人さんに「お前は声が太っている」と指摘していた。この指摘は、ある意味「本質は隠せない」ということを言っているような気がしたのだ。だから「元ヤンなめんなよ」と言った彼女の内側には、今でも強い反骨心が残っているのだろう。

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駅のホーム、うんこ座りでタバコを吸う学生の姿が日常だった20世紀。