逆恨みミッドナイト

 ふとした弾みで過去のイヤな記憶が掘り起こされ、震えるような怒りが湧いてくる時がある。怒りはすぐ収まり、すると、何故あんな過去のことを今さら思い出したんだろうと考える。それは、現場で怒ってないから帳尻が合わない怒りなんだと思う。その場では我慢したけれど、許せてないのだ。

 そういう怒りの貯蔵庫には、無数の不発弾が保管してある。ひとつ誤爆すると、芋づる式に同様のシチュエーションで不発だった怒りに引火する。だから、同時多発的に脳内で怒るので、瞬間的に震えがくるほど燃え上がってしまう。でも、目の前に対象がないので、シュワッと消えてしまうのだ。

 そうやって不発弾がシュワッと消えてなくなればいいのだけれど、正式に怒ってないので残留思念は消えないままだと思われる。だから、何度も同じ怒りのゴーストに襲われて、その都度「虚しいからやめよう」と思うのだ。いや、今はすでに怒りの兆しがあった時点で鎮まりかけていると思われる。

 僕の中に「正当な怒り」というものが存在すると思っているから、それを回収したい気持ちがあるのだろう。怒りなんてただの感情だ。理屈で説明がつかない怒りがあっても仕方ない。それを理詰めで押し殺して、脳内の墓に埋めてきたのだから、そいつらが亡霊となって僕を襲ってきたのだろう。

 僕の中の怒りが、上から目線の「怒らない僕」に対して向かっているのだ。だから、何度も同じ場面を思い出して怒りに震えている。もっと感情的に生きろよと言っているような気がする。感情を上手くコントロールする練習を怠ってきたから、上級者向けの感情である「怒り」は難しいのである。

 たぶん、単なる欲求不満なのだろう。かつてはラグビーで発散できていた種類の漠然とした不満が溜まっているのだ。たまにジョギングするのだが、走っている最中も怒りの反芻が止まらない時がある。体が怒りに支配されて、走る足を止めてしまうほどだ。そんな発作が、忘れた頃にやって来る。

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僕のジョギングコースは、僕の大好物の錆びたトタンだらけ。