同じキズ持つもの同士

 僕が観ていて真に面白いと思うスポーツは、ラグビーしかない。自分が経験者だからということもあるだろう。でも、単純にスポーツとして何よりも面白いと感じてしまう。あの面白さを実感するためにラグビー経験を積んでいたんじゃないかって思えるくらい、僕はラグビーしか楽しめないのだ。

 もちろん野球を観て面白いと思うこともあるし、好きな球団もある。そのチームが良いプレーをしたり、優勝に絡んだ試合などでは感動することもある。他のスポーツでも、感動的な名シーンにはしっかり心動かされる。だけど、自分のメインはいつだってラグビー観戦を最上位に置いていたのだ。

 プレーヤーとしては、30歳ちょうどでヒザの靭帯を断裂してからキツくなり、数年後にクラブを辞めて自然消滅のようにフェイドアウトしている。それでも、何かキッカケがあったら再開したいという願望はある。選手としてプレーするにはケガ体質なので、実戦復帰は厳しいだろうとは思うが。

 昨日、そのクラブ時代の仲間と酒場でバッタリ出くわした。ひとつ後輩なのだが、物怖じしない気持ちのいい男だ。そいつも僕と同じヒザのケガでラグビーから遠ざかっていた。それが、最近ちょっとしたキッカケで、あるチームの練習に顔を出したという。会うなりその話を一気にまくし立てた。

 つまり、今度いっしょに練習に行こうということだ。そいつの休日の都合が全然合わないので、実際に行くのは来年の春先なのだが。それでも、その猶予期間の間に体を作り直して、久しぶりにラグビーの現場に行けるのは楽しみである。多分ソッコーでケガすると思うけれど、それでも構わない。

 まるで伝言係のように、そいつはその話をして、僕が「行くよ」と返事をするのを聞いてすぐ帰って行った。いつも思うのは、僕は仕事運はあまりないけれど仲間には恵まれているんだということ。金の話以外ならなんでも相談に乗ってくれそうな、たくさんの気のいい仲間に支えられているのだ。