タスク倍増化計画

 以前の勤め先では、会社のホームページの更新を任されていた。すべての雑務が僕のところに落ちてくるので、仕方なくやっていた。大した作業ではない。毎月、正味30分程度の仕事量で終わる。それは僕がホームページ制作に長けているからではなく、その業務がその程度の軽さだからである。

 そんなことを取引先で話したことがあったらしく、その会社のホームページの更新を頼まれた。その時点で驚いたのは「この会社ってホームページなんかあったっけ?」ということ。長い付き合いだが、会社のSNSでさえ担当が辞めた途端に閉じてしまう情弱だし、社内で手に負えるわけがない。

 だから、割と重い仕事を振られる予感があった。この会社は、というかフリーの仕事なんて大体そうだと思うが、仕事の重さと報酬のバランスが合わない。提示されたギャラは想像以上に安かった。それでもホームページの更新程度なら「ま、いいか」と引き受けてしまった。この軽さが命取りだ。

 まったく畑違いの仕事なのだが、新しいタスクを覚えるのは楽しい。ホームページ制作会社の人から直接レクチャーを受けて、この程度なら「いける」と手応えを掴んだ。あとは作業に慣れて、スピードアップに比例して格安ギャラの比率を上げるしかない。時間が早いほど利益率が上がるわけだ。

 早速振られた仕事に手をつけたら、前日に聞いたことを全然覚えていない。それでもパンフレットやネットの情報に頼らず、素手ゴロ上等の気構えで作業に没頭した。集中して作業したら、なんとか更新できた。まだ手順に追われている部分はあるが、これは手堅い定期収入として続けていきたい。

 あんまり早く終わらせてしまうと、相手に簡単な仕事だと思われてギャラの値下げ交渉をさる恐れがある。ただでさえ安いのに、隙を見せると条件はどんどん悪くなる。弱肉強食の世界などと言うが、リアルに実感している。実生活では食いしん坊の僕だが、競争社会の中では食べられてばかりだ。

鉄道の趣味はないのだが、目的のない旅行先では鉄分の多い旅客と居合わせる。