この街のことを何も知らない

 昨日は、頻繁に顔を出している居酒屋の人たちと隣りの駅で飲み食いした。飲食店を営んでいる人間と同行するのは楽しいし、何よりプロと一緒にいる安心感と頼もしさがある。初めて行く店だったが、味に関しては完全に信頼しきっていた。そもそも、この駅の飲食店に入ること自体が初体験だ。

 まずはお好み焼き屋に向かった。その店は、先の居酒屋のスタッフの親戚が経営している。その人が「牡蠣が食べた〜い」というリクエストによって実現した食事会だ。お好み焼き屋の鉄板で焼く牡蠣は、見るからに明らかに美味そうである。バターを敷いた鉄板から立ち上る煙が食欲を刺激する。

 手慣れた手つきで焼いてくれた牡蠣をおのおの口に運ぶ。ちょっと小ぶりな感じだが、味は間違いない。いや、ハッキリ言って想像の数倍美味い。この季節はカキフライを偏愛してきたが、今後は牡蠣の鉄板焼きを愛でたい。食べながらさらに腹が減るような旨さで、全員一致でお代わりを頼んだ。

 ここで残念なお知らせ、本日分の牡蠣は終了とのことだ。どうやら前日にほとんど無くなってしまい、予約していた親戚(僕らのこと)の分の一人前だけ取っておいてくれたらしい。本来ならもっと大ぶりの牡蠣だとのことで、これは再訪したい理由が生まれてしまった。とにかく繁盛店であった。

 その後、お好み焼きやホタテなども楽しみ、瓶ビール数本で軽く酔ったところで次の店へと向かった。本格的な中華の店で、路地裏にあるので初見には分かりづらいとのこと。ひとりならまず入ることのない、目印のない小径を入った先に目当ての店はあった。その佇まいは異世界のように感じた。

 そんな異世界中華屋で火鍋を楽しんだ。油断すると辛くて、脳天から吹き出す汗で中年の薄頭髪がペッチャリとボリュームダウンする。でも美味い。温かい紹興酒も美味い。その国の食べ物と飲み物の相性は合うに決まっている。いつも無為に過ぎてしまう日曜日だが、充実した美食の日となった。

魅惑の火鍋は見るからに辛そうだし、魔女のスープのような禍々しさも感じる。