ブルージーナイトに乾杯

 先日から腰が痛いので、歩く時の姿勢がロボットまたは老人っぽくなってしまう。痛み止めの湿布を貼れば楽になるのだが、暑くなってきたので汗でかぶれてしまった。肌への配慮で湿布を止めていたら、痛みがいつまで経っても引かない。病院に行くのが嫌なので、しばらくは我慢の日々である。

 歩くのがシンドいとは言え、健康のために走ってみた。腰をかばいながら走るのは疲れる。姿勢良く走っていると割と楽なのだが、疲れてくると振動が腰に伝わって痛む。しばらくジョギングは休みだなと諦めて、後半はほぼ歩いて帰った。なんか疲れてしまったので、夕方早めに酒場に向かった。

 飲んでいても腰は痛むのだが、酔いが進んでくると軽く麻痺してくる。酒場のTVでは野球中継が、僕が推している球団の快勝を映していた。自然にゴキゲンさんになり、軽く終わらせるつもりが二軒目に行っていた。そこで常連の知り合いが後からやってきて、いつもよりも湿っぽく絡んできた。

 同年代の彼は、いわゆるルサンチマンこじらせ系のひがみっぽい男だ。彼の口から「アイツは金持ちだからモテる、アイツは顔が良いだけでモテる」等のブルーズを何度も聞かされた。でも、そんなブルーズが出るのは、彼が相当に酩酊した時間なのだ。だからコチラが何を言っても響きゃしない。

 そういった拗ねた部分を差っ引けば、まあ悪い男ではないような気がする。酒場の常連の中年たちは、ほぼ揃いも揃って独身男ばかりである。彼もその貴族院の仲間だ。同類相憐れむという言葉の通り、我々はある部分に関しては似た者同士と言わざるを得ない。そう、明らかにモテない中年男だ。

 だから、彼が世を拗ねたような愚痴を垂れるたびに「我が事」として訂正してしまうのだ。僕の意見じゃないですよと声高に否定しておかないと、傍目から見たら同類の僕も右に同じと思われる危険性があるのだ。金とかルックスのことを不惑を過ぎて言っても仕方ないのだが、そこが伝わらない。

中年になってから自社仏閣が落ち着くようになってきた。行きたくはないが。