いつ何時もコールミー

 仕事の電話でお客さんと話していると、当然ながら社会人モードでの会話になる。そこでの自分は普段とは違うが、とは言え完全な別人格でもない。どちらかと言うと部活の先輩と話しているときに近いかもしれない。なるべく仲の良い先輩との関係性を再現できるよう、小さな努力を重ねている。

 そんな中には最初から良い関係性で話せる人もいる。仲が良いわけでも趣味が合うわけでもないのだが、まったくストレスなく話せるようなお客さんだ。きっと大人なのだ。人間ができているので、誰と話しても同じようにストレスを感じさせないのだと思う。理想的な態度として見本にしている。

 仕事の相手と話すときは、何も構えず素直に接するように心がける。変に構えたり力んだりすると、自分で自分を追い込む状況になるような気がする。僕はあまりパニックになるタイプではないが、お客さんに電話する前には軽く深呼吸して気持ちを整える。いつも通りに話せば大体みんな優しい。

 そんな仕事の電話で、先方がこちらの話が終わったと思って切ろうとしたときに「あ、あともうひとつ」と電話を長引かせてしまうことがある。話がスムーズに進みすぎて肝心の用件を聞き忘れてしまうのだ。せっかくの良いムードを壊すことになるが、僕の本題はその先にあるのだから仕方ない。

 このように、電話で話を引き止めるときに僕の脳裏に浮かぶのは「相棒」の杉下右京。あの人も容疑者にしつこく最後の質問をする。僕の電話もあの感じになってしまう。それは僕が相棒を観すぎているからだろう。ただ、そのせいで相手に変な疑念を抱かせているんじゃないかと心配してしまう。

 だから逆に、最近ではあからさまに杉下右京っぽく「あ、あともうひとつ」と聞くようにしている。でも電話だと僕の手振りが見えないので、声帯模写のクオリティが低いせいもあり誰にも気付かれない。それ以前に、僕のお客さんが相棒を知らない可能性もある。それでも密かに続けようと思う。

f:id:SUZICOM:20211126192026j:plain

電話する時には相手の状況を慮ってしまう。非常事態時に出る客はいないが。