偶然ネコが通り過ぎる

 たまに風景の写真を撮っているときに、そのシーンの中に鳥でも飛んできたら「絵になるのになぁ」と思うことがある。また、水辺の鳥を見て、もう少し木陰に近い場所にいたら「絵になるのになぁ」と思うこともある。つまり、自然界の生物はこちらの絵心を汲み取ってはくれないということだ。

 その点、ネコというのは単体でも非常に絵になるように感じる。我が家の近所には何種類かのノラ猫が生息しているようだ。数は把握していないが、住宅街なので逃げた飼い猫もいるのかもしれない。そして、住宅街と大通りを隔てるワンブロックが謎の森になっていて、そこにも潜んでいそうだ。

 謎の森といっても、その奥には人家があるので、その家の庭が森のように広いというだけの話である。夏になると、その森からセミの超音波が地域に響き渡る。その森に桜でも咲けば地域の名物になるかもしれないが、緑色と茶色だけの世界なので特に気にも留めない。でも、相当な違和感がある。

 あの森のことが気になりすぎて話が逸れたが、とにかくノラ猫が住み暮らすのに十分な条件は整っていそうだ。そのノラ猫が、いつも絶妙に良い表情をしていたり、写真を撮りたくなるような動きをしているのだ。しかし、いざスマホを取り出して構えると逃げてしまう。気まぐれなモデルなのだ。

 何度か同じような経験を重ねたので、ヤツらのパーソナルスペースが分かってきた。結局ヤツらは捕まえられたくないので、そこまで近づかなければ逃げはしない。でも、逃げないとはいえ警戒モードになってしまう。それまでの自然なポーズの良さは消えている。だから、写真は撮らずじまいだ。

 ノラ猫の良さは、やはりその気まぐれさにある。一瞬の表情や絶妙にシチュエーションに合ったポーズが被写体として優れているのだ。ネコ動画に人気があるのも、その表情や動きの変化を見て飽きないからだろう。海辺で波を見続ける老人の心境と同じなのではないか。そんな僕は犬派なのだが。

f:id:SUZICOM:20210530170903j:plain

ジョギングの途中で見つけたノラ。寝姿を撮ろうとしたらこの中間姿勢に。

f:id:SUZICOM:20210530171001j:plain

イケるかと思って一歩踏み出すとこの警戒姿勢に移行。やはりノラは難しい。