現世は仮の住まいか?

 街で見かける「変なカタチ」の建物を訪問するTV番組が好きだった。狭い三角形の土地に無理やり立てた、ショートケーキを細くカットしたような建物は街中でもよく見る。あの先端部分、つまり最細の内観を見たいのだ。ただ実際に見るとファンタジーではなくなるので、今は見る必要はない。

 これもTV番組を観ての記憶だが、マンションの部屋を建て増ししすぎて奇妙な形になってしまったものを観たことがある。大して熱心に観ていた記憶はないのだが、その記憶を元にしたと思われる変なカタチのマンションの夢をよく見ていた。夢なので、設計的な根拠のない適当な仕上げである。

 子供の頃の夢で言えば、やはり「トムソーヤの冒険」に出てくるハックのツリーハウスだ。それは、小さい頃に持てなかった自分の部屋への憧れでもある。今は、あんな不安定な場所に家を持ちたいとは考えないが、キャンプ場などでツリーハウスを見ると「あ、住めるじゃん!」と思ってしまう。

 住む場所への憧れで言えは、やはりハードボイルドな住み処は倉庫だ。ホコリっぽい倉庫の2階で、拾ってきたようなボロいソファに腰掛けてバーボンを飲むのだ。そんな倉庫暮らしを見て思うのは「DIYでもっと良い部屋にできる」ということ。そんな感性はハードボイルドと呼ばないのだが。

 ただ、倉庫暮らしをしているやつは大体が正規の住居を持てない「追われる者」だ。グラサンで黒スーツの連中が、銃を持って踏み込んでくるのだ。だから、せっかくDIYで快適な部屋にしても、見るも無残に壊されるのがオチだ。追われる男とは、手荷物ひとつで即日旅立てなければいけない。

 最近では、田舎暮らし特集などでよく見る、空き家を安く貸し出すサービスなどにも興味はある。特に昨今のリモートワーク時代には、ネット環境さえ完備されていればどこでも仕事はできる。この手の行動は速さがものを言うので、思い立ったが吉日だとは思うけれど、まだ思い立ってはいない。

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凝った意匠の建物を見ると、分からないクセに金の計算をしてしまう。