旧式人間 vs. 無礼者

 酒場の客たちは、同世代か年下が多い。年齢で口調を変えるのはダサいので、基本的には親しくなっても敬語に近い話し方をしている。それは、仕事場でも年下から指示されることも多々あるので、そういう場で年齢を理由に偉そうにしないためでもある。年上だから偉いなんて、幻想に過ぎない。

 前職では、職場の人間がほとんど年下だった。そこに入ったばかりの頃、僕はもう決めてしまった。職場では「基本的に敬語で行こう」と。そうすれば気持ちが折れることはない。僕はいつでも敬語の人間なんだと思えば、相手が年下だろうと関係ない。僕の意思で敬語を選択しているだけの話だ。

 そのルールに縛られて、今でも初対面の人と話すときは敬語で入る。仕事先の話ではない。酒場での話だ。男女問わず、年齢問わず、そうありたいと思ってしまうのだ。ただ、ていねい過ぎて気持ち悪いと思われるのもイヤなので加減した敬語というか、冒頭に述べた通り敬語に近い話し方である。

 あとは「さん付け」励行だ。年下の人を「◯◯さん」と呼ぶことは意識している。年下だというだけで呼び捨てにすると、その呼び方に自分が慣れてしまい、態度まで呼び捨てにつられてしまう気がする。つまり、年上だというだけで偉そうにするダサいオッサンになってしまう。それは避けたい。

 子供の頃、近所のオッサンで一番嫌われていたのがこのタイプだ。自分が嫌いだった人間にはなりたくない。なりたい自分にはなれなくても、なりたくない自分は回避できるはずだ。そのための第一歩として「さん付け励行」と「なるべく敬語」で、くだらない大人にならない対策としているのだ。

 昨夜、酒場で一緒に飲んだ人間は、このスタンスの真逆を行く者だ。誰に対しても口が悪く、特に年下には踏ん反り返って話したりする。その男は年下なので、一応そういう態度は注意することもある。ただ、その注意に愛がないので、全く刺さらない。やはり僕もまだまだ修行が足りないようだ。

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長年生きてきたことで芽生えたプライドなんて焚き火と一緒に燃やしちゃえ。