すれ違うドランカーたち

 酒場で多くの酔漢たちと接してきたが、個人的にはほとんどの人間と上手く付き合っていると思う。酒場でしか会わない関係性もあるが、中には遊びに行ったりする間柄にもなったりする。そこに異性の影はなく、悲しいくらい男たちの世界。それは不服ではあるが、だからこそ上手くいっている。

 この上手くいっているというのは表面上のことに過ぎないが、裏表のない人間ならば表面上の付き合いで十分だ。僕は、仕事以外の場では隙だらけで、ありのまんまだ。武装したり構えたりするのが面倒だから飲んでいるので、そんな場では誰よりも弱い人間である。無意味に強がりたくないのだ。

 でも、酒が入ると「男論」をぶちかましたくなる心理があり、そういう男心に巻き込まれたりする。自分の尖った面を見せて他人と対立関係になっても、なぜか「そこは譲れない」などと言ったりする男プレイだ。その無駄なマッチョで損をしているんだと言っても「不器用だから」と言うプレイ。

 同じ酒場で長いこと定点観測していると、観測者のつもりが当事者になる可能性もある。酔った人間の偏って肥大した思考が、僕を敵とみなすこともあるはずだ。こんなに無防備な中年男でも、図体がデカいからというだけで難癖をつけてくる人はいる。だから、初めて見る客には警戒してしまう。

 酔っ払った体育会系が「腕相撲」を強要してくる文化がある。僕は腕相撲が苦手なので、絶対に乗らない。そうすると「男のくせに逃げるな」だの言われるので、相撲なら良いよと言うようにしている。酒場で相撲をとったら、それはもう喧嘩だ。だから相手も乗ってこないので平和的に解決する。

 昨日は酒場の住人たちが1カ所に集まって、バラバラにそれぞれギャーっと騒いでいた。騒然とした酒場でも、活況に見える場合と暴動寸前の熱狂に見える場合がある。活気で盛り上がっている店には多幸感が広がり、ただ騒いでいるだけの店には暴力の気配が兆す。その兆しを感じたら逃げよう。

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パソコンとの付き合い方は、いまだに学生レベルだと思っている。