俺とお前は不発弾

 時間に追われている仕事の現場では、みんな心なしか不機嫌だ。焦っているだけなのだが、その焦りが怒りを誘発するようなところがある。ソワソワがイライラに変わる、どちらもフツフツと沸いてくるので、血流の変化から脳が誤認するのだろうか。仕組みはわからないけれど、とにかくイラついている。

 僕もこの「締め切り時不機嫌症候群」の罹患者なので、当然イライラしてしまう側の一員だ。それを理解しているから、締め切りのかなり手前で仕事を終わらせる。だが、僕に仕事を振る人間は、締め切りの直前にポイッと投げてくる。時限爆弾が警告アラームを鳴らしてから渡される爆弾処理班みたいだ。

 昨日もポイッと投げられた爆発寸前の爆弾をふたつ放られ、ひとつは処理済みとなり、もうひとつは保留状態。締め切りは決まっているので、保留はできないはずなのだが待たされている。触れられない爆弾を抱えて相手からの返事待ちというのは、不機嫌症候群の患者に対してイチバン良くないストレス。

 そんなときは飲みに行って、頭の中を強制終了させてしまえば良いのだ。昨夜もそう思ったのだが、外は雨の後で湿っているし、なんだか寒くて気が滅入ってしまった。どうせ仕事は明日にならないと進まないのだが、僕の中では時限爆弾のタイマーがカチカチと動き続けているイメージが拭えないままだ。

 会社員の頃は、いつも腕時計を身につけていた。時間を確認するだけじゃなく、商談の際の小道具としても使えるアイテムだ。そろそろ次の仕事先に行きたいときに、チラッと時計を見ることで商談終了のキッカケを作ることができる。ちょっと失礼なのだが、直接「話が長い」と言うよりは多少マシかな。

 すべて面と向かって仕事をしていれば、時間に追われていても極端に不機嫌にはならないような気がする。僕の場合はすべて、電話かメールで指示されるのでムカつくのである。仕事の内容だけ言われて「素材は後で」と言うことが多いのだ。待たされる。この遠隔拘束時間に、焦りが怒りへと変換される。

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最近はスマホを時計がわりに見るくらいで、腕時計は身につけなくなってしまった。