混む店ニケーション

 狭いところが苦手な僕は、混雑した店にも入りたくないと思ってしまう。飲食店などで行列していたりすると、通される席は必ず両隣に人がいる。ひとつずつ空いているのが理想なので、両側に人が詰まった状態は非常に息苦しい。それでも、ごくまれに混雑した店でギュッとすることになるのだ。

 でも、空いてる場合でも注意が必要で、後から入って来られても気持ちが悪いのだ。僕から隙間に体を入れるときはまだ、最初から狭さへの覚悟ができているのだ。でも、後から横に座られると、急に汗が止まらなくなることがある。ある種の障害かもしれないが、診断は不要とだけ言っておこう。

 最初に狭い場所でクラッときたのは、初めてのクルマを買おうと思って中古車屋を巡っていたときだ。自分に希望がなかったので、会社の先輩といろんな車種を見て回っていたのだ。その時に、面白半分で先輩が「お前、これ乗れるかな?」と、スズキ・カプチーノの運転席に座ってみたのである。

 いや、もしかしたらホンダ・ビートだったかもしれない。とにかく、ものすごく小さなクルマだった。一瞬、こういう小型のスポーツカーに大柄の僕が乗るのも「面白いかな」と思ったのだが、乗った瞬間無理だと悟った。本当に気絶するんじゃないかと思うほど、一瞬で気が遠くなりかけたのだ。

 それは単に、僕の体に合わなかったというだけのことだ。実際にああいう小型スポーツカーに乗る大きな男というのはいる。体の曲げ伸ばしのバランス面から見て、僕には気持ちが悪いということだろう。ただ、それ以降「狭いところはいやだな」という印象が植えつけられたことは、間違いない。

 先日、ラーメン屋で席に座る時に、ちょうど3席空いていた。真ん中に座れば両隣は空けられる。でも、後ろに客がすでに並んでいたので、瞬時の判断で隣に人がいる席に座った。先に座っていた人は、僕が座った瞬間にビクッとしていた。そう、誰だって両隣を埋められるのはいやなものだのだ。

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このラーメン屋はいつも空いているので、隣に気を使うことはない。