誰よりも遠くへ翔べ
前の職場の営業エリアが日本全国ということだったので、数人で割り振って適当に回らされていた。遠いエリア、例えば北海道や九州・四国などは、出張費が嵩むので数字が見込める人間が担当する。それ以外の、クルマで回れる細かい地域を僕が任されていた。ハッキリ言ってかなり広域である。
そのエリアを任された理由は、単純に僕がクルマを持っていたからレンタカー代がかからないというものだ。なんかケチくさい理由だ。それでも、仕事とはいえ縁もゆかりもない土地へ行ける口実になるので楽しくはある。通常営業と雑務を全部押し付けられる会社より、出張の方が何倍も楽しい。
その頃は都内にも担当があって、すぐに呼び戻されそうなので長くても２泊くらいのもの。泊まった先では必ず夜飲みに行くので、昼の仕事でも情報収集は欠かせない。客に、その地域の旨いものや良い店が集まるエリアを聞いておく。あまり熱心に聞きすぎると誘っていると思われるので要注意。
本当は飲みニケーション上等なタイプなのだが、浅ましいヤツと思われたくなくて甘えられない。何度か甘えが成功して飲みに連れ回してもらったけれど、自分の金じゃなく、自分のチョイスでもない店では楽しめないのだ。外食の面白さは、やはり「自分で見つけた」という感覚が大事な要素だ。
僕がクルマ出張で行った最西端が兵庫で、最北端が岩手だ。家族のルーツが秋田なので、最初は秋田に行く途中だからと甘く見ていたが、岩手も十分に遠い。その後は「岩手は新幹線でお願いします」と頼み込み、クルマで行ったのは初回のみ。そして、一度新幹線を知ったらクルマには戻れない。
クルマ移動の程よい距離はどれくらいだろうか、僕にとって運転は常に１人なので必ず眠くなる。現状のお客さんでイチバン遠い場所は、栃木県宇都宮市なので、そこがリミットになりつつある。我が家から１００キロちょっとの行程なのだが、今はその距離も寝落ちドライブの対象圏内で危険だ。
