カエルだらけの夏祭り

 小学生の頃、夏休みには町内会の盆踊りがあり、その町内の少年野球部に入っていたので何かしら手伝っていたような記憶がある。露天商が来るような大きなイベントじゃないので、町内のいくつかの団体が持ち回りで店舗を出していたと思う。そこで、僕らも何か出せないかと知恵を絞ったのだ。

 あの頃は金魚すくいや亀すくいなどが一般的だったが、何かそれに代わる獲物はいないかと考えた。誰が考えたのだろう。たぶん野球部でイチバン冴えたアイデアを出すひとつ上の先輩だろう。僕らは隣の市の田園地帯に赴き、朝から田んぼの脇を流れる細い水路をほじくっては獲物を漁っていた。

 その界隈にはクロベンケイガニと呼ばれる程よいサイズのカニがたくさんいた。今でもいるかもしれないが、アレはちょっと気色悪いのでわざわざ見に行かない。そのカニだったら、夜店で出店するだけの量を採れただろう。でも、その日はたまたまカエルが大量に採れたので、カエルが狙われた。

 と言うのも、田園地帯に着いてすぐに真っ白のアマガエルを捕まえたのだ。いわゆるアルビノ種というヤツだが、そんな変種に幸先よく出くわしたので、それを吉兆と勘違いしてしまったようだ。今でもあの緑に映える白いカエルの異様さは覚えている。まるで自然なものに見えないケミカル感だ。

 僕は言わずもがな人間なので、ケミカルを作り出す科学サイドの生物だ。それに対してカエルは、あくまでも環境からの影響をダイレクトに受けるナチュラル側の生物。そこにアルビノ種が現れたので、子供心に自己嫌悪に似た感覚を覚えた気がする。そういった因果関係があるのかは知らないが。

 ちなみに、カエルが大量に採れたといっても子供の採取能力なんてタカが知れてる。とてもアトラクションとして出せるレベルの量ではない。そして炎天下の移動で大半のカエルは意識不明状態だ。そもそも、それを泳がせて客がすくうための設備もない。幻の企画は真夏の夜の夢となって消えた。

カエルの無防備な背中。背後から迫り来る巨人の目に気付いているのだろうか。