スピリチュアル・オブ・ジャパン

 年に何度か、富士山まわりで行われるアウトドアイベントに顔を出す。それは個人的な趣味ではなく、仕事だ。キャンプイベントなどのお手伝いとして仕事先から呼ばれる。いかにも楽しげなイベントだが、主催側のスタッフなので疲れ果てる。動き回った挙句、その日は車中泊だったりするのだ。

 毎回キャンプと言うわけじゃないが、それに類するイベントに顔を出すため、今日も早朝からクルマで富士山麓へと向かった。青木ヶ原樹海の先にある会場で、20世紀末に新興宗教団体の修行施設があった場所の近くらしい。実際のその場所は分からないが、懐かしい地名の名残りが散見される。

 アウトドア派の朝は早いので、集合時間に間に合うように出るためには5時起きになる。普段の怠惰な生活が祟って、早起きの日は前の日から憂うつな気分だ。その気分を消してくれるのはアルコール。気がつけば居酒屋に足が向いている。早起きの支障にならない程度に飲むつもりだったのだが。

 しっかり閉店時間まで飲んでしまった。いつも混む店なのに、妙にすいていたから長居してしまった。もちろん深酒している。おかげでコロッと熟睡できたが、起きた時の気分は最悪。それでも、目覚ましが鳴る前には起きていた。30分ほどスヌーズに急かされて、なんとか布団から飛び出した。

 彼の地へと向かう道中は、すいていた。朝早いし、天気も悪い。アウトドア派は全天候型でもあるので、まず間違いなく雨天決行だ。河口湖インターを降りたら、国道沿いの道端に除雪の跡が見られた。そう言えば、僕はこの地の寒さを知っている。合宿免許の宿舎と教習所がインター近くだった。

 そんな思い出が過ることもなく、アウトドア派が待つ仕事先へ急ぐ。晴れていれば富士山が見えるんだよなぁ、と思いながらクルマを走らせた。海なし平野生まれの僕には、富士山を見ることに特別感がある。遺伝子レベルで富士講を信仰しているのだろうか。ただ、ご本尊はまさに雲隠れという。

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誰もいない岩場、雨で煙るロケーション、少しだけ不気味で好き。