垂れ流しックスセンス

 子供の頃の恥ずかしい思い出というのは、不意を突いて襲いかかって来るものだ。僕が子供の頃、超能力ブームというのがあった。それは、スプーン曲げで有名なユリ・ゲラーから始まる一連のムーブメントだったと思う。ただ、無粋なマスコミにタネ明かしをされて下火になったと記憶している。

 その超能力ブームの後期、僕にも超能力の洗礼があった。その頃、映画館で観たアニメ「幻魔大戦」で超能力戦争のようなものを疑似体験した。僕の内面は主人公の東丈と同化し、さまざまな葛藤を経て超能力者へと目覚めてしまったのだ。ただ、現実の僕は当然、なんの能力にも目覚めていない。

 子供のイノセントは自由なので、それ以降「飛べるんじゃないか」と瞬間的に考えてしまうこともあった。ただ、とても常識的なので、高所でその妄想に襲われることはなかった。安全な方へとプロテクトがかかるような設計になっている。ちゃんと分かった上での妄想遊び。でも、半分は本気だ。

 そんな超能力幻想を抱きつつ、健康的な小学生を過ごしていたある時、友達から衝撃的な情報が寄せられた。近所の公園で「見た」というのだ。何を? もちろん超能力者を! それは会いたいと思ったら、彼らが「これから会いに行くけれど、一緒に来る?」と聞いてくれた。そりゃ行くわいな。

 ちなみに公園での超能力目撃談を簡単に説明しよう。公園で子供が転んでヒザから血を流していたところ、そこに通りかかった初老の男が子供のヒザに手をかざして血を止めたという。その初老の男に会いに行くのだ。その公園の向かい側にある古書店の店主だ。まさに、灯台下暗しというヤツだ。

 古書店に着いて、友達がどう説明したかは知らないが、店主の住居である2階に通された。そこで3人とも正座して瞑想させられたのだが、日差しが目を直撃して眩しいことこの上ない。目を開けた時に店主に指摘されて「瞼がオレンジになって」と言い訳したら、素養ありと言われた。ないけど。

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スピリチュアルなものに対して半笑いな僕を作ったのは古書店の店主だ。