路上の無念

 クルマを運転中に見かける路上の落し物で気になるのが手袋だ。まるで手首から切り落とされたみたいに、道路に晒し首ならぬ晒し手首の感じで落ちているのである。「上手いこと落ちたものだ」と思う。でも、確認しないので、あの中に身が入っていないとは言えない。と言っても確認はしない。

 あと、路側帯に投棄されている液体の入ったペットボトルも気になる。気になるというより、ある都市伝説が頭から離れない。あのペットボトルは、渋滞中に我慢できなくなった人たちが「代用尿瓶」として使った後の状態だという話だ。ラベルと中の液体の色が合ってないのがその証拠だと言う。

 渋滞中に突然もよおすことは多々ある。ただ、僕の場合は液体じゃない方が来るので、何かで代用しても車内には悪臭という証拠が残る。液体の方は比較的我慢できる。もし、仮に我慢できなくなったとしても、車内に大きなペットボトルはない。せいぜいが500の方なので絶対に溢れるだろう。

 路上の遺棄物として、不思議というか、ある種の恐怖を感じさせるものが靴だ。子供靴が落ちていることが多いように思われる。片方だけ落ちていると、これは事故に遭って飛んできたんじゃないかと思ってしまう。クルマがビュンビュン走る場所で子供靴を落とすシーンは、他には考えられない。

 遺棄された靴で妙なのが、両方揃えて置いてある時だ。靴を揃えて置く場面はドラマでしか観たことがない。それは、自殺志願者がビルから飛び降りる前に脱ぎ揃え、その靴の上に遺書を置くシーンだ。それを観ていつも思うのは、ビルの屋上は強風なので遺書が遠くまで飛ぶだろうなということ。

 まあビルの屋上の件は良いとして、揃えて置いてある靴の件だ。靴がワンセット捨てられるということは、不用品を不法投棄したからだろう。それが揃えられているのは、捨てられた靴を見て「まだ使える」と思った人が遺棄ではなく忘れ物だと判断して、見つけやすいように揃えたということか。

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道路工事中。この界隈は手袋や長靴の落し物のメッカだ。