いつでも便意を恐れない男

 外出先でのトラブルで、最悪かつ高頻度で起こるのが突然の便意だ。今までの人生で何度も冷や汗をかき、公衆の面前で大恥をかきそうになってきた。でも、かろうじて無事に乗り越えてきた。ここは、まさにサバイブという言葉が似つかわしい。便意サバイバーは今も戦い続けている。昨日もだ。

 僕は食後にすぐ便意に襲われる。特に汁物を摂取するとレスポンスが早い。ラーメンのスープを全飲みなどしたら、30分以内にトイレに行きたくなる。スープを飲まなければ良いのかもしれないが、ラーメンを食べてスープを飲まないという選択肢はないので、スープ全飲みが原因かは知らない。

 そして昨日、お客さんと昼飯にうどんを食べに行った。大好きな肉汁つけうどんだ。この肉汁は飲まずにはいられない。具材に肉とネギと油揚げが大量に入った極上のつけ汁は、うどんと相性が良いのはもちろん、うどんを食べ終えた後も具材が残るので食べ切ろうとすると汁も飲み干してしまう。

 そこからお客さんの事務所に戻って軽く打ち合わせをしていると、程なく便意に襲われた。話の途中でトイレに立つのは失礼なので、会話の切れ目を見つけてトイレに立った。こういう場面では難なくトイレに行ける。恥ずかしくも何ともない。ただ、トイレが長いことは恥ずかしいし申し訳ない。

 学生時代はトイレに行くことが禁忌だった。バレたら最後、灰色の学園生活に堕ちてしまうと思っていた。実際はそんなことないのだが、その思い込みからトイレの個室に入ることは滅多になかった。特に中学生の頃は、タバコを吸う先輩が絡んでくるので、トイレに行くだけでも面倒くさかった。

 今はトイレを見つけたら即入る。昨日も古本屋で尿意に襲われて、レジでトイレを聞いて急いで駆け込んだ。あまり店員に話しかけるのは好きじゃないのだが、トイレを聞くときだけはハキハキと、しかもサラッと訊ねられる。それは、僕の中に「トイレは仕方ない」という大義名分があるからだ。

本当の便意ピンチは路上にあるので、夜の工事現場で簡易便所を探してしまう。