ニューヨークに行きたいのか

 インバウンド消費という言葉を急に聞かされるようになった。海外からの旅行者がもたらす観光収入のことだろう。僕の業務には何ら影響を及ぼすものではないが、長らく続いた鎖国から解放されて旅行者が流れ込んでいるのは良いことなのだろう。コロナ禍が終末に向かっているのだと信じたい。

 入国が活発になったということは、出国も自由度が増したということだろう。円が弱いのでお得感はないけれど、行きたければ門は開いているといったところか。若い頃ならバックパッカーのような奔放な旅行に駆られたかもしれないが、もう海外に憧れるようなアクティブな気持ちは薄れている。

 僕は目立ちたがり屋な子供だったので、常に変なことをしようと心がけていた。笑ってほしいのだ。学年末になると将来の夢を作で書かされたが、それも奇をてらった内容が多かった。今でも覚えているのは、将来アメリカに渡って成功してみせる的な野望を記したこと。恥ずかしいったらないわ。

 そんな子供の夢を思い出したのは、先日飲み仲間同士の宅飲みで「アメリカ横断ウルトラクイズ」の動画を観たからだ。ニューヨークに行きたいか、と問いかけられた。果たして行きたいだろうか。僕はアメリカへの憧れがほとんどない。それなのに、子供時代には渡米して成功すると吠えている。

 先に記した通り、その作文はある種のウケ狙いを外しただけのことだ。でも、そういう大きな夢を語るみたいな冗談をやりたかったのだ。そう、あの頃のあの時点で、渡米も成功も僕にとっては冗談だったのだ。ただ、一縷の望みとして有言実行を将来の自分に期待した可能性があるかもしれない。

 アメリカへ行って、何で成功するのか。まったく頭に浮かばない。人種差別されて傷ついて帰ってくるイメージしか湧かない。できない理由を探して諦める人がいるが、この件に関しては全く心が揺れない。僕のアメリカへの渇望は、LAメタル全盛期で止まっている。あの頃のLAなら行きたい。

ニューヨークには行きたくないが、山の見える地域へは定期的に行きたくなる。