ウェイティングフォーユー

 僕はTVっ子だと思うが、その視聴遍歴の中でも珠玉の作品を挙げよと言われたら、真っ先に思い浮かぶのが「グレートジャーニー」だろう。探検家で医師の関野吉晴が南米の突端からアフリカまでの道のりを、人類の進化を遡るという大冒険だ。その行程は近代的動力を一切使わずに遂行された。

 その内容はとても面白かったのだが、10年近い時間を要しているので、すべての放送を観ているのかは分からない。ただ、いずれ必ずDVDを手に入れるだろう。それは自分で見返すためでもあるのだが、誰かにオススメを聞かれた時に即座に渡せる秘蔵のモノとして手元に置いておきたいのだ。

 さきほど、仕事の合間に関野さんをゲストに招いていろいろ質問する動画を観た。そこでは友達を作る時の秘訣のようなことを聞かれ、関野さんが応えた内容が秀逸だったので、備忘録として記しておく。関野さんは「時間をかければ誰でも仲良くなれるので待つ」と言う。その理由が素晴らしい。

 そもそも関野さんは「効率的」ということが嫌いで、非効率な世界を楽しんで生きている。動力を使わない冒険も、まさに非効率だ。そんな関野さんだから、友達作りも遠回りである。こちらからは仕掛けずに、相手の出方を待つと言うのだ。待っていると自然に仲良くなる機会がやってくるのだ。

 ちなみに関野さんは武道の達人でもあるそうなので、その真髄にも通じるような気がする。時間制限のあるスポーツでは仕掛けないと勝てないが、武道は負けなければ良いので、ひたすら待つのだ。その言葉には多くの気づきが含まれているが、関野さん自身も冒険で得たいものは気づきだそうだ。

 僕はいま効率を重視した世界に生きている。自分の仕事でも、効率的じゃないと不満を抱いてしまう。電車が遅れたら不機嫌になるし、メールの返信が遅いとイライラする。これらも効率の話だ。効率に縛られても何も良いことがない。あえて不便にしたいとは思わないが効率だけが正義ではない。

等々力渓谷にかかる赤い橋。近場のお手軽観光スポットはとても効率的だ。