初期衝動は無敵か

 僕はあまり衝動的に動くことがない。考えてから行動するタイプだ。傍目からは唐突に思える動きだとしても、自分の中ではそれは理に適っている。他者の評価と実際の自分が異なることは、世の中に多々あるだろう。衝動的に見える人間が計算高いことなんて、この世界ではよくあることなのだ。

 逆に、衝動的に見えるタイミングであえて動くということはあるかもしれない。アクティブな人間に見られたい、エキセントリックな行動で差別化を図りたい時などは、ちょうどいいインパクトを与えられそうな機会を待って動けば良い。不自然な動きが苦手な僕も、たまにそんな突飛行動を試す。

 それは瞬発力への実験なのだ。最近は体力とか健康面での不安があるのでやらないが、以前は急に走りだしたりした。その頃はスポーツのチームに参加していたので、その自主トレを兼ねて瞬発力を鍛えていた。周りの目が気になるので、人通りの絶えた夜中に不意にダッシュしてみたりするのだ。

 上のような行動は初期衝動とは違う。初動のクイックな動作の練習であって、内面から突き動かされるゾワゾワした感覚とは無縁だ。衝動的に動くという感覚も、それは条件反射のようなもので、言葉の意味では初期衝動とは似て非なるものだ。いや、似てもいない。初期衝動は、もっとピュアだ。

 そういう内面からの欲求は、年々なくなっている。そういう刺激は大切な「お告げ」のようなもので、後生大事にしていたい。でも、大事に抱えられないのだ。なにせ「初期」の衝動なわけで、同じことを繰り返していたらインパクトは減ってしまう。僕にとって最初の初期衝動はマンガだと思う。

 野球マンガの大傑作「キャプテン」を読んだ時に、これだけ努力すれば必ず報われるだろうと思った。いや、最初はアニメだったかもしれない。闇練でボロボロになりつつ、キャプテンとして成長する物語だ。あまり初期衝動的じゃないのだが、静かに僕を内部から燃やす何かが確実にあったのだ。

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酒場の初期衝動はビールなのだろうが、僕の場合は初期衝動だけで終われる。