異空間ですれ違う

 昨日は成人式。街が新成人で賑わう中を、酒場の仲間たちと飲みに出かけた。埼玉県川口市という、僕の住む地域からは微妙に離れた街のビール屋さんに顔を出した。バスで川口駅まで行くのだが、店は駅の反対側にあるので、駅周辺の新成人で賑わったエリアを通過する必要がある。すこし怖い。

 人の流れを見ると、僕らが目指す出口側からこちらに向かって和装や派手なスーツの若者が歩いてくる。どうやら式典が終わった時間ジャストに僕らが到着したらしく、もっとも人手の激しいタイミングにぶつかってしまった。完全に人が行く先を塞いでるので、掻き分けて進まなければいけない。

 僕は雑踏では早歩きになる。不特定多数の他人が、数で圧倒してくる世界から早く離脱したいからだ。そして、もっと若い頃は、この雑踏抜けが得意だった。スイスイと隙間を縫うように歩くことができた。そのコツは「遠くを見ること」だと先輩に聞いた。近場に目を合わせると止まってしまう。

 昨日は慣れない街だったので、この視線を遠くに保ってひたすら隙間を進むというのが上手くできなかった。パッと見で数百人以上いる彼らには、僕らは見えていないのだ。この日ばかりは彼らが主役。それはコチラも重々承知のうえ、仕方なくその前を通り過ぎている。そんな気分で突き進んだ。

 おそらく正味10分足らずで、その混雑地帯からは離脱できたと思われる。後ろに仲間たちがついてきていることを意識しながら、なるべく早く進もうとコースを選んで歩いた。雑踏を越えた頃には疲れ果てていた。集中力を使う時は息を止めてしまうのだが、この時ほど長い息止めは初めてかも。

 この時点で気がついておくべきだったのだ。今日は調子良くないと。完全に使い切った人間なので、これ以降の発言も行動もどこかチグハグで、人間関係を悪化させてないか心配だ。バグッた体にアルコールを足して、さらに普通でいられない僕。結局無事に帰れたけれど、覚えてないことも多い。

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駅周辺やガード下などの暗がりは怖いから近づかずに、遠くから見ている。