いびつなカタチが美しい

 変な体勢で作業をはじめると、その姿勢を直したくなくなる。適した格好に戻せば楽なはずなのに、その苦行のような姿勢でひと工程をクリアしたくなってしまう。自分にミッションを課して、それを成し遂げる達成感を得たいのだろう。でも、誰も褒めてくれないので、最後まで姿勢を正せない。

 食事の時も、かたむいた皿を直さずに食べたりする。最初に気がついてサッと直してしまえば、そういう変なモードには入らない。ただ、食べ始めた後で気がつくと直せなくなる。極秘ミッションが始まってしまう。それは他人に指摘された瞬間に解除されるので、当然バレないことが前提である。

 僕の食事の後のテーブルは結構汚れる。食べ物をこぼすのだ。口の行儀は良いのだが、手の行儀が非常に良くない。箸の持ち方にもあまり自信がない。学生の頃に「美味そうに食べる」と言われたことが支えになり、食べ方には自信があった。でも、それはラーメンや丼物をかき込む姿なのである。

 先日、数人でしゃぶしゃぶ屋に行った際も、僕の前だけ汁が飛び散っていた。食べ物を移動するときに手を添えたり、皿に取ったりする心配りがない。とにかく口に運ぼうとする。そのストロークが長ければ、途中で何かしら垂れるのは必定だ。そのことを理解しつつ、どこかで運に任せてしまう。

 こんなに奔放な箸使いなのに、テーブルには汚れひとつ残さない。そんな奇跡を起こしたくて、手や皿を添える気遣いを排除している。そんな時がある。はじめからマナーを重視するモードの時は、良い姿勢で綺麗に食べることもできる。ただ、気安い感じの食事会が雑にはじまると雑野郎になる。

 風呂上がりの半裸状態で仕事に手をつけてしまうと、半裸のまま目処がつくところまで仕上げてしまう。夏ならそれでも良い。でも、もう寒い。その寒さが仕事を急がせるのか、そういう半端な姿勢でやる仕事は早い。格好が雑なので、その反動で丁寧だったりもする。そのうち風邪を引くだろう。

f:id:SUZICOM:20211123151645j:plain

変なノイズが入った写真でも大事に保存している。ノイズへの偏愛だろう。