僕がスパゲティのころ

 このご時世では、大勢でランチに行く機会はない。以前は「みんなで昼飯でも食おうぜ」となった時は、人数が多いほど店を決めるのに時間がかかった。みんなとのランチを提案すると、大人数で入れる店を決めるところまで委ねられてしまう。ポストコロナの世界では、その手間はなくなるのか?

 そういう店ぎめの場面では、なぜか僕に委ねられることが多かった。別に僕は大勢でランチを食べたがるタイプではない。ひとりで良いのに、誘われてついて行こうと思っていたら「どこにする?」などと聞かれてしまう。すると、どうせ誰も提案しないだろうと思って自分の行きたい店を挙げる。

 候補が出ると意見が出てくる。例えば僕が「とんかつが食べたい」と言えば、それは「ちょっと重いな」などと反対してくる。それなら逆に「どこが良い?」と聞き返すと、そいつは「どこでも良い」なんてスジの通らないことを言う。その場合の「どこでも」は、とんかつ以外ということになる。

 とんかつが却下された時点で他のヤツが決めれば良いのに、なぜかみんな僕の方を見る。どうやら、まだ選択権は僕にあると言っているようだ。そんなの権利じゃない。ただの責任転嫁だ。でも、そういう店ぎめを託される場面は、気心知れた仲間うちでのことだ。だから、迷わず第二案を投じる。

 大勢で行ける店には限りがあるし、ある程度は大きなハコじゃないと入れない。または行き慣れた店で無理がきくところだ。店の規模を考えると、だいたいチェーン店になってしまう。そんな中で僕のお気に入りは、パスタの種類が多い店かとんかつ屋だった。だから、僕に聞く時点で二択なのだ。

 20代の僕は、パスタ大好き人間だった。トマトソースの虜で、中でもペンネ・アラビアータが大好物だった。だから、とんかつが却下されたら、自動的にパスタ屋に変更になるわけだ。今、大勢で行くとしたら中華屋一択だが、覚えたてのペンネに精神支配された僕に中華屋は目に入らなかった。

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鶴岡八幡宮のおしゃれフォント。外出先でのランチ選択はセンスが問われる。